研究課題/領域番号 |
22K20609
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 凡子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (60967339)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 獣医腫瘍免疫学 / 免疫療法 / 膀胱癌 / 犬 / 固形腫瘍 / IDO1 / トリプトファン / T細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が臨床検体の解析により見出した犬膀胱癌の新規治療標的のIDO1に対する阻害薬を用いた、新たな全身療法の確立を目指した前臨床研究を行う。 初年度は、実験犬へのIDO1阻害剤投与による用量漸増試験を行い、投与前および投与期間中の定期的な血液検査・尿検査・一般身体検査・胸部レントゲン検査によって、副作用を評価した。その結果、いずれの投与量においてもIDO1阻害剤の投与による重大な副作用は認められなかった。 上記の実験結果より、犬におけるIDO1阻害剤の安全性が示唆され、至適投与量が決定できたことから、犬膀胱癌を対象としたIDO1阻害薬の有効性と安全性の検証を目的とした臨床試験計画を立案し本学臨床試験委員会へ提出し、承認が得られた。臨床試験を開始し、臨床試験参加を希望された犬膀胱癌症例に対して、IDO1阻害薬の投与を開始した。初年度中に4症例が参加しており、一部症例では腫瘍縮小を認め、臨床例における抗腫瘍効果が認められた。また、全症例において重大な副作用は認められていない。次年度は、臨床症例の登録と、腫瘍径の変化および副作用の有無の評価を継続する。 また、臨床試験に参加している各症例の治療前および治療中の臨床検体 (末梢血, 尿, 腫瘍組織) の採材が完了しており、今後、これら臨床検体中のトリプトファン/キヌレニンの濃度、および抗腫瘍免疫状態の変化の解析することで、抗腫瘍機序の解明と治療効果予測バイオマーカーの探索を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、犬におけるIDO1阻害薬の安全性評価を主に進め、至適投与量が決定できた。これら結果をもとに臨床試験委員会の承認が得られ、臨床試験を開始することができ、安全性と一定の抗腫瘍効果が確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、臨床試験参加の犬膀胱癌症例を蓄積するとともに、画像検査による腫瘍径の変化および各種臨床学的検査による臨床症状の観察を継続し、臨床症例におけるIDO1阻害薬の長期的な安全性と抗腫瘍効果の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入業者の詳細な選定を行うことでIDO1阻害薬など試薬等の購入価格を当初予定よりも低く抑えられたため。余裕のできた予算は、臨床試験の組み入れ数の拡大およびバイオマーカーや機序検証実験の拡大に使用することで、より価値のある研究成果創出を目指す。
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