わが国の食鳥処理場では、衛生管理のために、食鳥処理(と鳥)前に肉用鶏(ブロイラー)を絶食させる。と鳥前の絶食処理は、ブロイラーの骨格筋タンパク質分解反応を引き起こし鶏肉の熟成に影響することにより、鶏肉品質をばらつかせる可能性が高い。本研究の目的は「と鳥前の絶食ストレスに起因するブロイラーの骨格筋タンパク質分解反応の個体差が鶏肉品質に及ぼす影響の解明」とした。 令和5年度は、ブロイラーにおいて同一絶食時間の条件で試験を行い、骨格筋タンパク質分解反応の指標である血漿中Nτ-メチルヒスチジン濃度の個体差と鶏肉品質(栄養価や呈味成分)および鶏肉品質に寄与する骨格筋タンパク質分解酵素に及ぼす影響との関連を調査した。その結果、4段階の絶食時間を設けた事前試験と同様に、同一絶食時間条件においても「生体内の骨格筋タンパク質分解レベル」と「熟成後の鶏肉中の遊離グルタミン酸含量」との間に相関があった(P<0.05)。さらに、熟成後の鶏肉中遊離グルタミン酸含量と数種類の骨格筋タンパク質分解酵素のmRNA発現量との間に相関があった(P<0.05)。これらの結果から、「と鳥前の絶食ストレスに起因する骨格筋タンパク質分解反応の個体差」と「熟成後の鶏肉品質(遊離アミノ酸含量等)」との間には関係があることが示唆された。また、令和5年度は熟成後の鶏肉における食味特性としてHPLC法による、うま味成分の分析(遊離アミノ酸含量)の他、味認識装置を用いた分析も完了できた。
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