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2022 年度 実施状況報告書

8分節D型インフルエンザウイルスを用いたM1・M2タンパク質の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K20619
研究機関麻布大学

研究代表者

石田 大歩  麻布大学, 獣医学部, 助教 (40963476)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワードD型インフルエンザウイルス / リバースジェネティクス / M分節 / 8分節型D型インフルエンザウイルス / M1 / M2 / P42 / スプライシング
研究実績の概要

D型インフルエンザウイルス(IDV)は、経済損失の高いウシ呼吸器病症候群(BRDC)の原因ウイルスの一つであり、その詳細なウイルス学的性状解析が求められている。IDVは7本に分節化したゲノムを有し、その内、M分節にはM2タンパク質の前駆体タンパク質p42とスプライシングにより転写・翻訳されるM1タンパク質がコードされている。通常のM分節では、一方の遺伝子に変異を導入した場合、もう片方の遺伝子にも変異が生じてしまうため、これらのウイルスタンパク質の機能を個別に解析するための変異ウイルスの作出は困難である。そこで本研究では、申請者がこれまでに開発してきたリバースジェネティクス(RG)法を基に、①M1とM2(p42)遺伝子をそれぞれ別の分節(M1とM2分節)にもつ8分節型IDVを作出することで、②M1およびM2タンパク質の機能ドメインを明らかにすることを目的とした。
当該年度は、IDVのM1遺伝子内のスプライシングドミナント配列にサイレント変異を入れることでp42遺伝子のみを発現するRG用プラスミドを構築した。またM分節のイントロン領域を欠損させることで、M1遺伝子のみを発現させるRG用プラスミドを構築した。これらのプラスミドとM分節以外の各分節発現プラスミドを用い、申請者が以前に開発したRG法により、ウイルス作出を試みたところ、M1とM2(p42)遺伝子をそれぞれ別の分節(M1とM2分節)にもつ8分節型IDVの作出に成功した。この組換え技術を基盤に、M1およびM2タンパク質の各種変異ウイルスを作出することで、それぞれのタンパク質の詳細な機能が明らかになることが期待される。次年度は、実際に本手法によりそれぞれのタンパク質の機能解析を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画当初、M1遺伝子内のスプライシングアクセプター配列にサイレント変異を入れることでp42遺伝子のみを発現するRG用プラスミドを構築する予定であったが、プラスミドクローニングが上手くいかなかった。そこで、スプライシングアクセプターではなくスプライシングドミナント配列にサイレント変異を入れることでp42遺伝子のみを発現するRG用プラスミドを構築した。このプラスミドとIDVのウイルスポリメラーゼタンパク質(PB2、PB1、P3)とヌクレオチドタンパク質(NP)発現プラスミドを細胞にトランスフェクトしたところ、mRNAのスプライシングは生じず、M1遺伝子は発現されないことが確認された。このp42遺伝子発現プラスミドとM1遺伝子発現プラスミドをM分節以外の各分節発現プラスミドと共に細胞へトランスフェクトすることでM1とM2(p42)遺伝子をそれぞれ別の分節(M1とM2分節)にもつ8分節型IDVの作出に成功した。これは研究計画当初想定していた通りの進展である。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画通り、次年度はウイルスの複製や増殖に関与するM1・M2タンパク質の機能ドメインを明らかにするために、アミノ酸を部分的に欠損させたM1あるいはM2タンパク質を有する8分節型IDVの作出を試みる。具体的には、10アミノ酸ずつ欠損させたM1分節発現プラスミドを構築し、これをRG法に用いることで組換え欠損ウイルスの作出を行う。またP42タンパク質についても同様な欠損ウイルスの作出を行う。作出可否は、RT-PCRによるRNA分節の検出とシークエンス解析で判定し、これにより、ウイルス産生に関わる必須機能ドメインの同定を行う。また、作出された各欠損ウイルスの増殖性を網羅的に比較解析することでウイルスの増殖性に影響をおよぼす機能ドメインの同定を行う。

次年度使用額が生じた理由

研究計画段階では、プラスミドクローニングや8分節型ウイルスの作出に難航し、酵素や試薬類を多く必要とする可能性を考慮していたが、想定より少ない試行回数で、期待する組換えウイルスの作出に成功した。また、試薬等の消耗品の購入価格が当初計画と少し異なっていたこともあり、次年度使用額が生じたが、基本的には計画通りである。次年度は、より多くのプラスミドクローニングと組換えウイルスの作出を予定しているため、関連する酵素や試薬類が必要となる。また、当初予定していた安価なプラークアッセイの手法では、D型インフルエンザウイルスのウイルス力価を測定するのは困難であるため、免疫組織染色によるプラークアッセイの実施を予定している。こちらの手法では免疫染色用の抗体や試薬類が必要となる。これらの酵素、試薬、抗体などに、次年度使用額と翌年度分の研究費を充てる予定である。

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公開日: 2023-12-25  

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