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2022 年度 実施状況報告書

冬眠する哺乳類の高濃度ビタミンE蓄積・全身輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K20621
研究機関北海道大学

研究代表者

山内 彩加林  北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00951394)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード冬眠 / 低温耐性 / シリアンハムスター / ビタミンE / α-トコフェロール輸送タンパク質
研究実績の概要

冬眠する哺乳類は、ヒトが生存困難な低体温状態でも生存可能な低温耐性を有するが、この低温耐性の仕組みは未だ殆ど不明である。我々の先行研究で、冬眠する哺乳類シリアンハムスターの肝細胞は、ビタミンEの一種であるα-トコフェロール(αT)を高濃度に蓄積することで低温耐性を発揮することが見出された。αTはハムスターの血中や他の臓器でもマウスに比して非常に高濃度で確認されることから、全身へのαTの分配・蓄積機構が全身の細胞・臓器の低温耐性に重要な役割を果たすことが予想される。しかし、 このαTの全身分配・蓄積の分子メカニズムはハムスターでは殆ど不明である。αTはヒト・ マウスではαT輸送タンパク質(alpha-tocopherol transfer protein: TTPA)により肝臓から血流に分泌され全身に分配される。我々はハムスターのTTPAが他の哺乳類のTTPAと多くの点で異なることを見出した。本研究の目的は、ハムスターTTPAの機能解析を通じて、αT蓄積・全身への輸送機構の分子メカニズムを理解することである。そのために、①ハムスターTTPAと他の哺乳類のTTPAの分子性質の違いの解明と、②ハムスターの低温耐性にTTPAが果たす役割の理解、の2つの研究方針で進めている。
初年度は、ハムスターTTPAの多量体形成能について検証を進めた。また、ハムスターの低温耐性にTTPAが果たす役割の理解を目指し、初年度に新規導入したゲノム編集技術:脂質ナノパーティクル(LNP)-CRISPR/Cas9システム系の立ち上げも進み、動物や細胞での条件検討段階に入っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、ハムスターTTPAの機能解析を通じて、αT蓄積・全身への輸送機構の分子メカニズムを理解することである。そのためには、ハムスターTTPAの分子としての性状を明らかにすることと、ハムスターにおけるTTPAの低温耐性における役割の理解が必要である。
採択初年度の本年度は、①ハムスターTTPAの分子特性を明らかにするために、まず多量体形成能の解析を行った。精製したハムスター・マウスTTPAをNative-PAGEおよびゲルろ過カラムクロマトグラフィーに供した結果、多量体のサイズが異なることが示唆された。ヒトTTPAは単量体に比べ多量体でαT輸送能が向上するという報告がある。ハムスターTTPAの多量体形成能とαT輸送能の関係をより詳細に調べるために、比較対象としてヒトTTPAの組換えタンパク質を新たに作製し、現在比較解析中である。
②ハムスターにおけるTTPAの低温耐性における役割の理解を目指し、脂質ナノパーティクル(LNP)とCRISPR/Cas9システムを組み合わせた遺伝子ノックアウトハムスター/肝細胞の系立ち上げを進めた。ハムスターはマウスの5倍以上の個体サイズを有し、必要となるゲノム編集試薬の量も多くCas9の組換え体を自作した。自作Cas9は、in vitroおよびin vivo(マウス)で市販品と同等の標的DNA切断活性を示した。自作Cas9を用い、LNP-CRISPR/Cas9システムによるハムスターおよび初代肝細胞の遺伝子ノックアウトが可能かどうか検討中である。

今後の研究の推進方策

ハムスターTTPAの分子性状解析を続ける。具体的には、ハムスターTTPAのαTや脂質との結合能を解析する。また、ハムスターTTPAの多量体形成能およびαT輸送能について、ヒトTTPAのそれと比較する。さらに、ハムスターにおけるTTPAの低温耐性における役割の理解を目指し、ハムスターおよびその肝細胞のノックアウトの条件検討およびαT量の測定を進める。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 昆虫由来不凍タンパク質の氷結晶結合機能と細胞保護機能2023

    • 著者名/発表者名
      山内 彩加林、津田 栄
    • 雑誌名

      低温科学

      巻: 81 ページ: 37-49

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 冬眠する哺乳類と変温動物の低温適応機構2023

    • 著者名/発表者名
      山内 彩加林、山口良文
    • 雑誌名

      BIO Clinica

      巻: 38 (4) ページ: 6-10

  • [雑誌論文] Adsorption of ice-binding proteins onto whole ice crystal surfaces does not necessarily confer a high thermal hysteresis activity2022

    • 著者名/発表者名
      Arai Tatsuya、Yamauchi Akari、Yang Yue、Singh Shiv Mohan、Sasaki Yuji C.、Tsuda Sakae
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 15443

    • DOI

      10.1038/s41598-022-19803-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 日本産越冬性昆虫オオクワガタ由来不凍タンパク質の発見2022

    • 著者名/発表者名
      山内彩加林、新井達也、津田栄
    • 学会等名
      第67回低温生物工学会
  • [学会発表] 昆虫由来不凍タンパク質は哺乳動物細胞を-5℃でも生存可能にする2022

    • 著者名/発表者名
      山内彩加林、近藤英昌、新井達也、津田栄
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会
  • [学会発表] 不凍タンパク質と粘性物質を組み合わせた培養細胞の新規凍結保護剤2022

    • 著者名/発表者名
      張陸岩、山内彩加林、津田栄、大山恭史、近藤英昌
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会
  • [学会発表] オオクワガタ由来不凍タンパク質の特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      飯田裕喜、新井達也、山内彩加林、津田栄、大山恭史、近藤英昌
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会
  • [学会発表] The structure-function relationship of ice-binding proteins from cold-adapted organisms2022

    • 著者名/発表者名
      Akari Yamauchi
    • 学会等名
      IBP International seminar series 2021-2022
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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