研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト神経分化モデルとして、中脳由来神経前駆細胞株 (LUHMES)を使用し、神経分化過程におけるプロモーター・エンハンサーの制御地図を完成すること、ならびにゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)データとの統合解析により、エンハンサー上に存在する疾患関連遺伝子多型が遺伝子発現に与える影響を明らかにすることである。 初年度となる当該年度は、LUHMESの分化誘導後1日目、3日目、6日目の細胞について、Cap analysis of gene expression (CAGE)法を用いてプロモーターの活性変動の計測を行い、さらに同じタイムポイントの細胞についてNative Elongating Transcript (NET)-CAGE法を用いて、エンハンサー領域の網羅的同定および活性変動の計測を行った。我々は以前、single-cell tagged reverse transcription RNA-sequencing (STRT RNA-Seq)を用いてLUHMESの分化誘導段階におけるトランスクリプトーム解析を行ったが (Lauter, Coschiera, Yoshihara et al., J Cell Sci, 2020)、CAGE法によっても同様の傾向が観測された。一方、エンハンサーについては、これまでにFANTOM5プロジェクトなどで同定されていない、約3万の新規エンハンサー候補領域が同定された。転写因子の結合モチーフエンリッチメント解析を行ったところ、プロモーター領域とエンハンサー領域で異なる傾向が観察された。 さらに、疾患関連遺伝子多型とエンハンサー領域の統合解析により、パーキンソン病や統合失調症などの神経・精神疾患関連遺伝子多型が、新規エンハンサー候補領域に濃縮することが明らかとなった。
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