研究課題
前年度までにヒト中脳由来神経前駆細胞株 (LUHMES)を用いて、神経分化過程におけるエンハンサー領域の網羅的同定を行っていたため、最終年度はHiCap (Capture Hi-C)法を用いた高次クロマチン構造解析による、標的遺伝子の探索を試みた。特に、Parkinson病や統合失調症などの神経・精神疾患関連遺伝子多型を含むエンハンサー領域に着目し、それらの標的候補遺伝子との相互作用を確認するため、ゲノム編集技術(CRISPR遺伝子活性化システム)を用いた検証実験を行った。その結果、これらのエンハンサー領域を活性化することで標的候補遺伝子の発現が上昇し、相互作用の証明に成功した。本研究では、LUHMESの分化誘導後1日目、3日目、6日目の細胞について、Cap analysis of gene expression (CAGE)法を用いてプロモーターの活性変動の計測、Native Elongating Transcript (NET)-CAGE法を用いてエンハンサー領域の網羅的同定および活性変動の計測を行った。さらにHiCap法を用いた高次クロマチン構造解析を行うことで、ヒト神経分化段階におけるプロモーター・エンハンサーの相互作用も明らかにした。同定されたエンハンサー領域には神経・精神疾患関連遺伝子多型が高密度に濃縮しており、さらに、神経分化・発生に関与する遺伝子の発現を制御することが示唆された。本研究によって得られた知見は、これまで明らかとなっていなかった神経・精神疾患の病態解明や治療開発の基盤となることが期待される。
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