研究課題/領域番号 |
22K20623
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原口 武士 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (30736963)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ミオシン / アクチン / シロイヌナズナ / モータータンパク質 |
研究実績の概要 |
ミオシンは、アクチン繊維上を運動するモータータンパク質である。ミオシンは動植物を含む全ての真核生物に存在し、少なくとも79のクラスを形成している。モデル植物シロイヌナズナには、クラスXIミオシンが13種類、クラスVIIIミオシンが4種類存在する。ミオシンXIの既知の主要な役割には、原形質流動の駆動がある。ミオシンVIIIは原形質連絡の開閉に関わることが示唆されているが、その詳細なメカニズムは不明である。これまで申請者は、植物ミオシンを生化学的手法で解析してきた。その結果、シロイヌナズナのミオシンXIは植物内でそれぞれの役割に適応した酵素活性と運動速度を有していることを示した。さらに、シロイヌナズナのミオシンVIIIはATPサイクル中のアクチンとの結合時間が長く、張力発生やエンドサイトーシスに関与することを明らかにした。しかし、植物ミオシンには機能未知ドメインが存在しているために、その生理機能は十分に理解されてはいない。そこで本研究では、植物ミオシンの様々な機能未知ドメインが関わる生理機能およびその機構を明らかにすることを目的とした。 まず、シロイヌナズナクラスVIIIミオシンの機能未知ドメインの生理的機能を解析し、酵素活性に与える影響を明らかにした。次にシロイヌナズナ細胞内でアクチン束にシロイヌナズナミオシンが与える影響の定量に成功した。さらに、シロイヌナズナミオシンの軽鎖による運度活性への影響を測定した。その結果、ある特定の軽鎖がシロイヌナズナミオシンの運動活性に重要な役割を果たすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナミオシンの機能未知ドメイン欠損体のみ発現・精製は順調に進んだ。さらにシロイヌナズナミオシンの機能未知ドメイン欠損体の酵素活性を測定し、生化学的な側面からも機能未知ドメインの生理的な役割を見出した。 シロイヌナズナ細胞内でアクチン束にシロイヌナズナミオシンが与える影響を定量し、シロイヌナズナミオシンの新たな生理機能の一端を明らかにした。 シロイヌナズナの軽鎖の大腸菌での発現・精製に成功した。精製した軽鎖を用いてシロイヌナズナミオシンの運動活性を測定し、シロイヌナズナミオシンの軽鎖による運動調節機構を詳細に明らかにした。 上記のような進捗から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナミオシンの機能未知ドメインがシロイヌナズナ細胞内でどのような生理的機能をもっているのかを、変異体を用いて調べる。さらにシロイヌナズナミオシンの機能未知ドメインがもつ生化学的特性をより詳細に明らかにする。 アクチン束化実験に関しては、シロイヌナズナミオシンとアクチンとの共沈実験や電子顕微鏡を使用することで、生化学的特性をより詳細に解析する。 シロイヌナズナミオシンの軽鎖による運度活性への影響に関しては、共同研究者と論文を執筆中である。論文は2023年度には投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた実験の一部を来年度に延期することになった。延期に伴い、長期間保管が困難な消耗品の購入は来年度に移行する必要が生じた。この状況を踏まえ、今後は、実験計画において余裕を持ったスケジュールを設定し、消耗品の保管期限についても再確認し、適切な管理を徹底する。
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