研究課題/領域番号 |
22K20630
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹之下 憂祐 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任研究員(常勤) (40962965)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 染色体分配 / 動原体 |
研究実績の概要 |
キネトコアは、細胞分裂期に染色体を等しく分配するために、染色体と紡錘体微小管とを正しくつなぐ機能をもつ超分子複合体である。キネトコアがこの役割を遂行するためには、細胞周期の進行に伴って機能に適した形に構造を変える必要がある。実際に、紡錘体微小管と結合する細胞分裂期のキネトコアは、間期のキネトコアを形成するCENP-TにKMNと呼ばれる紡錘体微小管と結合するタンパク質複合体が結合することで形づくられる。しかし、この構造変化の制御機構はわかっていない。本研究は、CENP-TとKMNの分裂期特異的な結合に着目し、細胞生物学的解析とクライオ電子顕微鏡による構造生物学的解析とを組み合わせることで、どのようにして機能的な分裂期キネトコアが作られるのかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず、KMNの構成因子のひとつであるMis12複合体とCENP-Tとの複合体の構造予測をもとに培養細胞を用いた変異体解析をおこない、Mis12複合体とCENP-Tとの結合のふたつの結合界面を同定した。この内ひとつは、Mis12複合体のリン酸化により制御されていることを示唆する結果を得た。さらに、これらふたつの結合界面とは別の領域において、リン酸化されたCENP-TとMis12複合体とが結合することを示唆する結果も得ている。これらの結果から、CENP-TとMis12複合体の結合には少なくとも3つの結合界面があり、これらの結合はMis12複合体とCENP-Tそれぞれのリン酸化により協調的に制御されていると考えている。 また、質量分析によるリン酸化部位の同定やクライオ電子顕微鏡によるMis12複合体とCENP-Tとの複合体の構造解析のため、細胞分裂期に同調した培養細胞からのタンパク質精製法の確立もおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mis12複合体とCENP-Tとの複合体の構造予測をもとに、Mis12複合体とCENP-Tとの複数の結合界面を同定し、これらの結合がMis12複合体とCENP-Tそれぞれのリン酸化により制御されることを示唆するデータを得ることができた。また、質量分析によるリン酸化部位の同定やクライオ電子顕微鏡によるMis12複合体とCENP-Tとの複合体の構造解析のための、分裂期に同調した培養細胞からのタンパク質精製法も確立しつつある。以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
クライオ電子顕微鏡を用いたMis12複合体とCENP-Tとの複合体の構造解析、質量分析を用いたリン酸化部位の同定おこなう。この結果をもとに、培養細胞を用いた変異体解析をおこなうことで、分裂期型キネトコアの構築原理を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象となる計画は、運営費交付金等の研究費により予備的実験として遂行し、一定の成果をあげた。そのため、本科研費からの執行が予定より少なかったが、来年度予定している、クライオ電子顕微鏡による構造解析や質量分析によるリン酸化部位の同定等の実験には、より経費を必要とする。実験の進行も順調であり、次年度に全額執行する予定である。
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