研究課題/領域番号 |
22K20645
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
利嶋 奈緒子 北海道大学, 高等教育推進機構, 学術研究員 (00961228)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 連合学習 / 味覚 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
生存や繁殖、または成長するため、生物は適切な栄養素を探して摂取しなければならない。昆虫のように単純な脳を持つ生物でも、味覚と嗅覚の連合学習などによって過去の経験を記憶し、その記憶を効率的な食物の探索のために利用することが可能である。アミノ酸は生物にとって必須の栄養素の一つであるが、生物がどのようにして必要な種類のアミノ酸を必要な量、外界から探して摂取しているのかは、解明されていない部分が多く存在する。本研究ではアミノ酸記憶の形成、想起の神経回路を明らかにすることを目標に、キイロショウジョウバエの幼虫を用いて遺伝的手法と行動神経的手法を組み合わせて研究を進めている。 本研究の一環として、ショウジョウバエのアミノ酸味覚受容を担っているとされてきたイオンチャネル型受容体を発現する味覚ニューロンが、アミノ酸の味覚・嗅覚連合学習にも関わっているのか調べた。その結果、イオンチャネル型受容体のひとつであるIR76bを発現するニューロンは、アミノ酸の報酬学習に必要である一方、嫌悪学習には必要でないことがわかった。アミノ酸の報酬と罰は異なる味覚受容経路を介して学習されることが示されたと共に、アミノ酸学習では報酬と罰が並行的に、別々の記憶として保存されているという、これまでの私の予測を裏付ける成果である。また、IR76bを発現するニューロンを光遺伝学の手法を用いて人工的に活性化させた場合、ニューロンの活性化と結びつけられた匂いに対して、幼虫はアミノ酸記憶のように報酬と罰の両方の記憶を示すことがわかった。この成果はBiology Letters誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実験系の立ち上げに時間を要したために、研究に多少の遅れがあり期間の延長をすることとなったが、研究はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では想定していなかった研究成果も多くあったため、その成果の学会発表や論文発表をすることとなった。今後はドーパミン作動性ニューロンの抑制を行なって、アミノ酸記憶の形成と想起の役割を担うニューロン群を特定するという、当初の計画に沿った実験を主に進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにより期間の延長を申し出たため。実験のための消耗品の購入と、学会発表の旅費として使用予定。
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