研究課題/領域番号 |
22K20646
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
門坂 崇秀 北海道大学, 大学病院, 医員 (40968343)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | O-GlcNACylation / HFpEF |
研究実績の概要 |
高齢化人口の増加に伴い心不全の罹患人口は増加している。心不全の約半数は心収縮の保たれた心不全(HFpEF)であり、その病態には細胞内カルシウムハンドリング異常の関与も指摘されている。HFpEF患者の約半数は糖尿病を合併し、糖尿病合併HFpEFと非合併HFpEFでは異なる病態機序を示す可能性がある。我々は糖尿病性HFpEFにおいて蛋白の糖鎖による翻訳後修飾O-GlcNAcylationが細胞内カルシウムハンドリング制御タンパクである、CaMKIIやPLBの機能に関連している可能性を示唆する結果を得た。本研究は糖尿病性HFpEFと非糖尿病HFpEFにおけるO-GlcNAcylationの比較とその抑制が細胞内カルシウムハンドリングの改善や血行動態の改善に影響を与えるかを検討することを目的としている。 現在までに、近年HFpEFに対して有効性が示されつつあるSGLT2阻害薬が糖尿病性HFpEFモデルマウスにおいて、直接的に心筋タンパクのO-GlcNAcylationを抑制すること、また、心筋細胞においてSGLT2阻害薬がGlucoseの細胞内への取り込みを抑制することがわかった。心筋細胞においては基質であるGlucoseの取り込みが抑制されることによってタンパクのO-GlcNAcylationが抑制されている可能性が考えられた。 今後は糖尿病性および非糖尿病性HFpEFモデルにおけるO-GlcNAcylation転移酵素OGTおよび加水分解酵素OGAの発現やカルシウムハンドリング制御タンパク個々のO-GlcNAcylationを確認し、両モデルの違いを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在は主に糖尿病性HFpEFモデルであるdb/dbマウスでのO-GlcNAcylationの果たす役割とSGLT2阻害薬がHFpEFへの有効性を示していることから、その作用機序を解明することで、糖尿病性・非糖尿病性にかかわらず、HFpEFの病態におけるO-GlcNAcylationの重要性を検討している段階である。非糖尿病性HFpEFモデルとしてはアンジオテンシンII持続投与モデルマウスを用いる予定であるが、HFpEFは多様な病態背景を有する疾患であることから、モデルとして適切であるか検証している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは糖尿病性モデルでの検証を継続しつつ、非糖尿病性HFpEFモデルの確立をめざす。モデルが確立され次第、蛋白のO-GlcNAcylationおよび関連蛋白の発現について検証を加えていく予定である。また、非糖尿病性モデルにおけるO-GlcNAcylationの関連が示されれば、Cre-loxPシステムを利用し心筋特異的OGT遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを作成し、糖尿病性、非糖尿病性HFpEFを誘発し検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
非糖尿病モデルが検証段階であることと、糖尿病モデルにおける実験を研究室にある試薬で行ったため次年度使用額が生じた。 令和5年度は実験動物およびウェスタンブロットによるタンパク発現量評価に用いる抗体などの備品の購入に主に使用する予定である。一部は実験結果が得られた後に海外学会発表を行うための旅費としての使用を予定している。
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