女性は痛みに強いと言われてきたが、ヒトやマウスを用いた研究から、女性は男性よりも痛みに敏感であることが明らかになってきた。さらに、慢性的な痛みを伴う疾患の罹患率は、女性の方が多いことが知られている。このように、痛みは性差のある病態であるにも関わらず、その詳細な制御機構は未だ解明されていない。しかし、これまでの痛み研究は男性を主体として推し進められてきたため、女性における痛みの調節機構・慢性疼痛の分子基盤は殆ど明らかになっていない。また、痛みの研究は行動実験に依存しており、分子・細胞レベルでの疼痛制御機構を理解するためには新たな研究ツールの確立が不可欠である。本研究は、痛み研究の新たな基盤となる脊髄組織内ライブセルイメージングによる痛みモニターシステムを構築することを目的とした。脊髄組織内のミクログリアを特異的に可視化できるIba1-Cre;tdTomatoマウスの脊髄組織切片を作製し、スピニング式共焦点顕微鏡で数日間のライブセルイメージングを行った。坐骨神経痛を結紮した疼痛モデルマウスを用いた解析により、細胞動態(細胞体の大きさ、突起の数、長さ、太さ、形態変化、細胞移動速度、移動方向、移動距離)のパラメーター抽出、定量することができた。さらに、雌マウスから作製した脊髄組織切片を用いて、アンドロゲンによるミクログリアの活性化抑制効果について、上述の細胞動態の観点から検証することができた。
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