研究課題
アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)は不可逆的な進行性の認知症疾患であり、 脳組織でアミロイドβ (Aβ)が蓄積した後、神経細胞内でリン酸化タウが沈着し細胞毒性を発することで起こる。患者は世界的に増加しているが予防・治療法が確立しておらず、ADの分子病態を解明するには新たな多角的な取り組みが必要である。本研究ではタウを修飾するO型糖鎖の機能に焦点を当て、O型糖鎖がADの発症や進行に及ぼす影響を調べる。そのために、Aβ病変かつタウ病変を示すヒトAD病理と類似するADモデルマウス(APP-KI:Wtau-Tg)を作製、解析を行う。O型糖鎖修飾によるタウのリン酸化と神経細胞死の制御機構、また、Aβ沈着による神経炎症とタウのO型糖鎖修飾の関係を解析することで、ADの遷移機構を明らかにする。O型糖鎖に着目した本研究はADの発症機構の新規知見となり、ADマーカーの確立や創薬標的としてADの予防、治療法の開発に貢献すると考える。Aβ病変に伴うタウのO型糖鎖修飾の機能を解析するために特異的な抗体が必要となる。そこで第一にO型糖鎖修飾タウに対する抗体の作製を行い、抗体の性能評価をウエスタンブロッティングで行っている。具体的には、ここではWtau-Tgマウスを用い、作製した抗体によりマウス脳からO型糖鎖に修飾されたタウを精製した。O型糖鎖を認識するRL2抗体と抗タウ抗体を用い、作製した抗体がO型糖鎖修飾タウを認識することをウエスタンブロッティングにより確認している。更にマススペクトル解析によりタウのO型糖鎖修飾やリン酸化部位を同定を行うため、解析に必要なO型糖鎖修飾タウの精製条件を検討している。このようにタウを修飾するO型糖鎖の機能に着目し、作製したO型糖鎖修飾タウに対する抗体を用い、O型糖鎖とADの発症や進行の関連性やタウを修飾する新規O型糖鎖の同定を目指す。
3: やや遅れている
①別の論文の投稿準備をしたため(第16回 東北糖鎖研究会で発表)。②新設校であるため、当初予定していた以上の教育業務を担当し、新学年を開講する準備(講義・実習・コロナ対策)に多くの時間を割く必要があったため。③当初予定していなかった学会の運営などの業務に多くの時間を割く必要があったため。④マウスを導入したため、解析に用いる十分量のマウスを増やすのに時間を費やしたため。
現在、マススペクトル解析によりタウのO型糖鎖修飾やリン酸化部位を同定を行うため、解析に必要なO型糖鎖修飾タウの精製条件を検討している。このようにタウを修飾するO型糖鎖の機能に着目し、作製したO型糖鎖修飾タウに対する抗体を用い、O型糖鎖とADの発症や進行の関連性やタウを修飾する新規O型糖鎖の同定を目指す。W更に、tau-TgマウスとAPP-KI:Wtau-Tgマウスの比較解析を行う。Wtau-TgマウスではFLAGタグが結合したタウを発現しており、発現量が高く生化学的解析に適している。そこで対FLAG抗体を用いて両マウスよりタウを精製することで、Aβ病理に伴うタウのO型糖鎖修飾やリン酸化修飾の経時的な変化を調べる。O型糖鎖はO-GlcNAc付加酵素とO-GlcNAc 分解酵素(O-GlcNAcase, OGA)により合成と分解が行われる。そこで脳内の各酵素の経時的変化をWBや定量的PCRで調べる。
別の論文投稿の準備(第16回 東北糖鎖研究会で発表)や、また、新設校であるため、当初予定していた以上の教育業務を担当し、新学年を開講する準備(講義・実習・コロナ対策)に多くの時間を割く必要があり、究課題の進捗が遅れたため。また、大学から割り当てられる研究費を優先的に使用したため。
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