研究実績の概要 |
ヒルシュスプルング病患児と腸管神経節が正常な患児の細胞外マトリックス(Extracellular Matrix: ECM)を比較するためヒルシュスプルング病根治術および乳児の人工肛門閉鎖術の手術時に検体を採取し脱細胞を行った。また、同一のヒルシュスプルング病患児において神経節細胞が正常な口側腸管と神経節細胞が欠如している肛門側腸管よりそれぞれ別々に検体を採取し、脱細胞を行った後に組織学的比較を行った。 脱細胞はデオキシコール酸ナトリウムとDNAseを用いたDetergent enzyme treatment (DET)法により行った。溶液内に組織を浸潤させ振動させることで細胞除去を効率化させ、予備実験により適切な反応時間、振動数を最適化させた。脱細胞後の組織は脱細胞前の組織と組織染色(H&E, Masson's Trichrome, Alcian Blue, Sirius Red)およびDNA定量により比較した。組織染色では腸管の層構造を含むECMが温存されていることが確認でき、かつDNA定量でDNA成分が効率的に除去されていることが証明された。 続いて脱細胞化ECMを細胞培養の培地として使用するためにECMスライスの作成を行った。脱細胞化組織をOptimal Cutting Temperature compound (OCT)内に包埋しCryostatを用いて50μmに薄切、作成されたスライスをPoly-L-lysineコーティングされた円形カバースリップ上に回収することでECMを含む培地を作成する技術を確立させた。本研究により確立された技術を応用して、今後、神経幹細胞の遊走・分化の研究、強いては新規治療の開発へと発展させていく見込みである。
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