研究課題/領域番号 |
22K20657
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
豊島 拓樹 東京農業大学, 生命科学部, 助教 (20965529)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 微細藻類 / 光合成 / カロテノイド / アスタキサンチン / 光酸化ストレス / 極限環境 |
研究実績の概要 |
申請者は通常の光合成生物が生存できない過酷な環境下で生存可能なイカダモ科の微細藻類Coelastrella astaxanthina Ki-4が有する光酸化ストレス防御メカニズムについて研究している。これまでの研究から、本藻類はモデル藻類が光合成活性を失活し枯死する強光が付随する環境ストレスに晒されると、細胞の赤色・肥大化を伴いながら長期間生存する。その過程では、光合成活性の一時的な減少からの回復や真核光合成生物に類例を見ない水溶性アスタキサンチン結合タンパク質を大量に生産するユニークな応答を示すが、その詳細は未知である。そこで本課題では本藻類に特徴的なAstaPの発現機構の解析と光合成回復要因の解明を目的として、(1)光合成活性回復過程でのトランスクリプトーム解析及びastaPプロモーターの調査、(2)光合成活性回復過程でのメタボローム解析、(3)光合成活性の減少と回復の要因としての非光化学的消光の解析に関して研究を進めている。 初年度はトランスクリプトーム解析並びにメタボローム解析を中心に取り組んだ。特にC. astaxanthinaは非モデル藻類であるため、遺伝情報が十分に整備されていないことから、ドラフトゲノムを解読し、トランスクリプトームデータのゲノムマッピングを可能とした。これら項目に関して比較的良好に研究が進展したが、結果に関しては当該年度に得られた結果について現在追試試験を実施しており、再現性が得られた段階で随時評価・報告を行う方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要欄に記載した内容について、全体的に順調に進展している。当該年度は特に光合成回復過程での網羅的遺伝子発現解析において、非モデル藻類であるC. astaxanthina Ki-4のドラフトゲノムを解読し、RNA-seqデータのゲノムマッピングを可能とした。その結果、astaPと協奏的に発現変動する遺伝子群が観察され、ドラフトゲノムを決定したことからそれらの上流配列であるプロモーター領域の取得に成功した。また、メタボローム解析では極性代謝産物の抽出法を確立し、ストレス付与後の経時的な解析が可能となった。未発表データのため詳細は記載できないが、光合成回復過程での特徴的な代謝産物変動を観察した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、astaPプロモーターの調査及びC. astaxanthinaが有するNPQのメカニズムの調査を行っていく。特にastaPプロモーターは光酸化ストレス下で高発現を維持することが判明しているため、その誘導因子並びに発現制御機構を解明し遺伝子工学に貢献することを目指す。また、C. astaxanthinaが有すると推定されるNPQについては既知のメカニズムとは異なる可能性が示唆されており、その誘導条件や光酸化ストレスとの関係性について調査し、光合成生物の新たな知見の獲得への貢献を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について、遺伝子発現解析用試薬等が購入前の保存試薬類で充当が可能であったことが要因である。また、参加を予定した学会がオンライン開催となったため、申請した旅費は使用しなかった。 本年度は、予定している解析用試薬類並びに消耗品類を購入予定である。旅費に関しては、研究発表を行う国際学会の参加や研究調査のための海外出張を予定していることから昨年度使用額を利用して充当する方針である。
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