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2022 年度 実施状況報告書

基底膜による老化抑制機構の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K20658
研究機関関西学院大学

研究代表者

柴田 幸政  関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (80314053)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード細胞外マトリックス / コンドロイチン / 老化 / リソソーム
研究実績の概要

本研究計画の目的は、①細胞外マトリックスの構成因子による老化抑制効果を示すこと、②細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御を明らかにすること、③細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御に必要な細胞内シグナルおよび転写制御因子を明らかにすること、④細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御がオートファジーを抑制することを示す、の四点である。
①これまでに細胞外マトリックス関連の5つの遺伝子について老化との関連を調べた。具体的には、コンドロイチン合成酵素SQV-5, コンドロイチン伸長因子MIG-22, ADAMTSプロテアーゼMIG-17, IV型コラーゲンLET-2, 分泌蛋白質フィブリンFBL-1をコードする遺伝子である。このうちsqv-5変異体およびmig-17変異体では、その機能低下により老化が促進されることが明らかとなった。さらに、mig-22優性変異体では老化の遅延と寿命の延長が観察された。また、fbl-1の点変異がmig-17変異体の早期老化を抑圧することも明らかにした。
②sqv-5変異による短寿命は、リソソームの分解活性に必要なV型ATPの構成因子VHA-7の抑制によって回復した。また、野生型では老化に伴いリソソームの体積が増加し、チューブ状の形態をとるようになる。sqv-5変異体ではこれらの変化が早期に見られることを見つけている。
③mig-22優性変異による寿命延長が、転写因子DAF-16と脱アセチル化酵素SIR-2.1, SIR-2.3により行われる可能性を検討した。その結果、DAF-16依存的に寿命延長が引き起こされていることがわかった。
④現在行っている細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御を明らかにしたのち研究を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では、①細胞外マトリックスの構成因子による老化抑制効果、②細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御、③リソソームの活性制御に必要な細胞内シグナルおよび転写制御因子、④細胞外マトリックスによるオートファジーの抑制、を明らかにすることを目的としている。
各目標に対するこれまでの成果と達成度は以下の通りである。①個体老化に必要な細胞外マトリックス因子として、SQV-5, MIG-22, MIG-17, FBL-1の4つを同定した。老化を制御する細胞外マトリックス因子を複数同定したことから、当初の目標は達成した。現在はヒトでもその改善が望まれる老化に伴う運動能力の低下について、さらに詳細に踏み込むために細胞外マトリックスと筋肉の組織老化との関連を調べている。②ではリソソームの関与を示す遺伝学的な証拠はすでに得られている。具体的にはsqv-5変異による短寿命に対する抑圧変異vha-7である。このvha-7はリソソームの酸性環境を維持するV型ATPaseの構成因子をコードする。現在までにsqv-5変異、mig-22優性変異が、リソソーム老化に伴う形態変化にどう関わるかを調べ、sqv-5変異体では老化に伴うリソソームの変化が早く起こるという予備的な結果を得ており計画通り順調に進んでいる。今後、形態だけでなく、動態やpHに対する影響も調べ、リソソームの活性と細胞外マトリックスの関係を明らかにする。③では、mig-22優性変異による長寿命が転写因子DAF-16に依存していることを明らかにし、計画通りに順調に進んでいる。次に、細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御にもDAF-16が関与するかを明らかにする。④は当初より②と③の進捗状況をみきわめつつ進める計画であり、来年度に取り掛かる予定である。

今後の研究の推進方策

2022年度の研究成果により、細胞外マトリックスがリソソームを介して老化抑制を行うという当初からの仮説を支持する結果が得られている。そこで当初の予定通り、引き続きこの仮説を証明するために研究を進めていく。
①細胞外マトリックスによる個体老化に抑制を示すという当初の目標は達成しており、組織老化の研究へと進んでいく。特に老化による運動機能の低下に着目し、老化に伴う筋肉と神経の機能低下を防ぐ上で、sqv-5, mig-22, mig-17が果たす役割を調べる。
②細胞外マトリックスによるリソソームの活性制御は、引き続き細胞外マトリックスの異常によって引き起こされる、リソソームの形態異常を解析する。さらに、リソソームの動態や、pHへの影響も調べ、細胞外マトリックスが老化に伴うリソソームの変化のどの側面に関与するかを明らかにする。
③リソソームの活性制御に必要な転写制御因子、細胞外マトリックスによる個体老化の抑制はDAF-16を介して起こることをすでに見つけている。DAF-16は活性化とともに核に局在するので、核局在についても各変異体で調べる。また、ヘミデスモソームの異常が中間径フィラメントを介してリソソームを活性化することが知られているので、細胞外マトリックスによる老化制御にも関係する可能性を検討する。
④細胞外マトリックスによるオートファジーの抑制を明らかにするために、autophagosomeとautolysosomeを同時に観察できるmCherry::GFP::LGG-1を用いて、各変異体のオートファジー活性の比較を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた主な理由は、研究に使用する線虫株の作成が順調に進み線虫培養用品および分子生物学実験用試薬の使用量が当初より抑えられたこと、外国語論文の投稿が2023年度にずれ込んだことが主な原因である。使用計画としては、組織老化の研究を追加で行うため、そのために必要な線虫培養用品や分子生物学実験試薬が必要となるので、これに用いる。また、2023年度に繰越となった外国語論文の投稿にも用いる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] コンドロイチン重合因子MIG-22の変異による老化の遅延と寿命延長2022

    • 著者名/発表者名
      柴田幸政
    • 学会等名
      分子生物学会

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公開日: 2023-12-25  

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