研究課題
本研究では、基底膜による老化抑制機構があることを示し、その実体を明らかにすることを目的としている。この目的は達成することができ、Scientific reports誌に論文として発表した。具体的にはまず細胞外マトリックスのコンドロイチンに着目し、C. elegansコンドロイチン重合因子MIG-22のの機能獲得(gf)型変異を同定し、この変異体でコンドロイチン量が野生型の2倍に増加していることを示した。コンドロイチンはコンドロイチン合成酵素SQV-5とMIG-22の複合体によって合成され、mig-22gf変異はコンドロイチン合成能を亢進させると考えられる。mig-22gf変異の単離で、既存のsqv-5機能低下型(rf)変異と合わせてコンドロイチン量を遺伝学的に操作することが可能となった。そこで、これらを用いてコンドロイチンが寿命と健康寿命を延ばす働きがあることを明らかにした。従来から、コンドロイチンの摂取によって寿命が延長することは知られていたが、体内のコンドロイチンの増加が関与することを明確に示したのは今回が初めてであり、また、健康寿命への効果を示したのも初めてであった。さらに、基底膜の再構成に必要なADAMTSプロテアーゼのC. elegans相同分子MIG-17の変異体では、寿命には変化がないが、健康寿命が短くなることを明らかにした。興味深いことに、mig-17変異体の短い健康寿命は、mig-22gf変異によって抑圧されることも見つけた。コンドロイチンはコアタンパク質と結合し、コンドロイチンプロテオグリカンとして細胞外マトリックスに存在することが知られている。本課題の成果から、コンドロイチンが基底膜において、ADAMTSプロテアーゼの下流で老化抑制を行うことを示すことができ、当初の目的を達成することができた。
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Scientific Reports
巻: 14 ページ: -
10.1038/s41598-024-55417-7
https://www.kwansei.ac.jp/news/detail/5131