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2023 年度 実施状況報告書

植物のケイ素利用様式が多様化するメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K20661
研究機関東北大学

研究代表者

梶野 浩史  東北大学, 生命科学研究科, 特任研究員 (30967790)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2025-03-31
キーワード樹木機能形質 / バイオメカニクス / 葉寿命 / 多様性 / トレードオフ
研究実績の概要

本研究の目的は、なぜ陸上植物の葉のケイ素濃度は種間で大きく異なるのかという問いに答えるために、植物のケイ素利用にかかる制約を明らかにすることである。具体的には、葉のケイ素濃度、力学特性、葉寿命を多種間で比較し、「ケイ素濃度の高い葉は硬いが脆い(より小さな変形で壊れる)ため、ケイ素の利用は葉を長期間維持する種には適さない」という仮説を検証する。
2年目である今年度は、1年目に育成した日本国内に自生する樹木20種の実生苗の葉の力学特性を測定した。また、野外に生育する常緑樹と落葉樹の近縁種のペア(例えばブナ科のアラカシとコナラや、バラ科のバクチノキとヤマザクラ)15ペア30種を対象に葉の力学特性を測定した。材料試験機を用いた引張試験によって、葉のヤング率、強度、最大ひずみを測定し、種間で力学特性を比較した。
常緑樹と落葉樹の近縁種のペアの比較の結果、常緑樹の葉は落葉樹よりもヤング率、強度、最大ひずみがすべて高いことが分かった。つまり、常緑樹の葉は落葉樹よりも強度が高いだけでなく、より大きな変形に耐えることが分かった。葉の力学特性に関する先行研究のほとんどは強度に着目したものであるため、葉がどれだけ変形できるか(≒葉のしなやかさ)が葉の長期間の維持に重要であることを示唆する本研究は、葉の力学特性の生態学的意義の理解を大きく深めることが期待される。この成果は第135回日本森林学会で発表し、現在論文投稿の準備を進めている。
申請者の過去の研究で、ケイ素濃度の高い葉はより小さな変形で壊れることがすでに分かっている。よって、本研究の、常緑樹の葉は落葉樹よりも大きな変形に耐えるという結果は、「ケイ素濃度の高い葉は硬いが脆いため、ケイ素の利用は葉を長期間維持する種には適さない」という仮説を支持するものである。今後は常緑樹と落葉樹の葉のケイ素濃度を比較し、仮説をさらに検証する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度予定していた葉の力学特性の測定は予定通り行うことができた。特に、常緑樹と落葉樹の比較では、近縁種の常緑樹と落葉樹のペア15ペア30種の葉の力学特性を測定することができ、常緑樹と落葉樹の葉の力学特性の違いについて、様々な系統で一般性のあるデータを取ることができたと考えている。

今後の研究の推進方策

今年度度力学測定を行ったサンプルの化学特性を来年度に測定する。また、実生苗については今年度追加播種した種もあるため、追加播種された種の力学特性、化学特性の分析を来年度行う。また、葉の力学特性が光環境に応じてどのように種内変異するかも検証する必要があると判断したため、来年度検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

力学試験を行った葉の化学分析をする必要がある。共通圃場で育てた樹木実生苗を用いた比較では、より一般性のある結果を得るために、種数を増やす必要がある。また、葉の力学特性は光環境の影響も強く受けると予想され、種間で葉の力学特性を比較する際には光環境に応じた種内変異がノイズとなる恐れがある。本研究ではできる限り直達光の当たる葉を対象としているが、野外では直達光の当たらない葉を取らざるを得ない状況も多々あるため、葉の力学特性がどの程度光環境の影響を受けるかは検証しておく必要がある。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 常緑樹の葉は落葉樹よりも強度が高いだけでなくより大きな変形に耐える2024

    • 著者名/発表者名
      梶野浩史、小野田雄介、彦坂幸毅
    • 学会等名
      第135回日本森林学会

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公開日: 2024-12-25  

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