研究課題
種分化の過程では、常に二種の分化が拡大する方向に進化が進むとは限らない。交雑は二種の遺伝構成を均一化し、それまでに進行した分化を逆行させる。近 年、いったん交雑しても、ゲノムが混合したままではなく、二つの遺伝的に異なる集団に再度分離する可能性が指摘されている。本課題では、交雑後の「完全に 均一化するか、それとも再分離するか」という対比的な帰結を生み出す要因を明らかにするために、2011年東北震災が誘発したイトヨとニホンイトヨ間の交雑を 材料に、交雑後も遺伝的分化が維持される機構を追究した。第一に、淡水と汽水といった対比的な野外環境下で雑種と純系種を飼育し、生存率を指標とした網羅 的なゲノムスクリーニングを行った。第二に、交雑初期からの長期モニタリングや、複数の雑種集団を対象した広域調査によって得た標本を用いて集団遺伝解析 を行い、雑種の適応度低下の原因変異が除去されるとともに、次の世代ではその領域での再分離が進んでいるか検証した。第三に、この震災後の進化を追試する ための野外実験系も構築した。本実験系は15トンのタンク内に淡水から汽水までの環境勾配を設定したものである。現在、複数のトゲウオ種を入れて繁殖を促 し、進化実験のための条件検討を進めているところである。
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Ecology and Evolution
巻: 13 ページ: 1-9
10.1002/ece3.10077