研究実績の概要 |
2022年度は、Glyoxal固定の条件検討及び、皮質6層錐体細胞に感染しやすいAAVベクターのセロタイプについて検討を行なった。 【Glyoxal固定の条件検討】Glyoxal溶液を用いて固定した脳サンプルに対して免疫染色をおこない、将来の解析で使用する可能性のある各種抗体について、染色性を評価した。その結果、Glyoxal固定サンプルでは、細胞膜上に局在する分子の染色性が大きく向上することを見出した。一方、細胞質に存在するタンパクの検出能は、一般的なPFA固定よりも劣っていることも明らかとなった。染色する標的にあわせて両固定法を使い分けることにより、従来よりも効率的に標的分子を標識することが可能となった。 【AAVベクターのセロタイプ検討】レポーター蛋白を標的細胞に導入する手段として使われるAAVベクターだが、セロタイプによって感染する細胞に偏りが生じることが知られている。そこで、AAV2/1, 2, 5, 6, 8, 9, retroの各種ベクターを皮質に注入し、感染性について評価したところ、全てのセロタイプで感染に層特異性が認められた。 【ルシファーイエロー注入による標識法の開発】本研究の目的は皮質6層の錐体細胞の解析であるが、さらにその先の研究では全層の錐体細胞や各種抑制性細胞なども対象とした解析を目指しており、その為には全ての細胞種に対して使用可能な普遍的標識法の確立が必要となる。しかしながら、ウイルスベクターを用いた標識法では、感染特異性という壁を突破することが難しいことが判明した。そこで、細胞種非特異的な標識法として、固定脳の神経細胞へルシファーイエローを電気注入する手法に着目し、同標識法の確立を目指すこととした。
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