2023年度は、色素(ルシファーイエロー)注入による細胞標識法の開発をおこなった。 【ルシファーイエローを用いた樹状突起標識法の開発】当初はAAVベクターを用いて神経細胞を標識することを計画していたが、神経細胞種への感染特異性が排除できず、標的とする細胞への感染効率が著しく低くなるという問題が発覚した。そこで申請者は、どのような細胞種にも汎用的に使用可能な手法である、細胞内へ色素を電気注入する手法を採用することとした。ウイルスベクターを使用しなくなったため、遺伝工学的な技術を用いて特定の細胞種のみを標識することが困難となった。この問題点を克服するため、色素注入前に免疫染色をおこない、陽性となった細胞を標的として色素を注入する手法の開発を試みた。 将来的に発展させる予定であるストレスモデルマウスを用いた実験を想定し、抗体染色では抗c-Fos抗体を使用した。固定脳スライスを作成後、界面活性剤を使わずに抗体染色を行い、スライス表面に位置するc-Fos陽性細胞を蛍光標識することに成功した。また、蛍光標識されたc-Fos陽性細胞へ針を刺入し、色素を注入することにも成功した。 【樹状突起の形態解析法の確立】c-Fos陽性の細胞へ色素を注入した後、抗ルシファーイエロー抗体を用いてシグナルを増感した。続けてScaleSF法によりスライスを透明化し、共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより、樹状突起のシャフトだけではなく、スパインも明瞭に可視化されていることを確認した。また、Neurolucida 360とImarisを用いてトレースを行い、樹状突起の3次元再構築にも成功した。
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