研究課題/領域番号 |
22K20707
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 和佳 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (80967274)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | タンパク質分解 / SNIPER / PROTAC / 多価型ペプチドライブラリー法 / BCR-ABL |
研究実績の概要 |
近年、標的タンパク質を特異的に分解するTargeted Protein Degradation (TPD)技術が開発され、創薬技術として注目されている。TPDの代表的な化合物であるSNIPER/PROTAC は、標的タンパク質特異的に結合するリガンドと、E3リガーゼのリガンドとを結合させたキメラ化合物であり、標的タンパク質を強制的にユビキチン化し、プロテアソームでの分解を誘導する。細胞内のさまざまなタンパク質を分解する化合物を開発することが可能であるが、新規SNIPER/PROTACの開発には標的タンパク質に結合するリガンドが必要であり、そのリガンド探索は必ずしも容易ではない。そこで本研究では、多価型ペプチドライブラリースクリーニング法を用いて新規リガンドを探索し、SNIPER/PROTACに組み込んで新規キメラ化合物を開発することを計画した。多価型ペプチドリガンドは重合するタンパク質に高い親和性で結合するという特徴を示すので、Proof of concept 研究として、慢性骨髄性白血病の原因因子であり細胞内で三量体を形成するBCR-ABLに結合する多価型ペプチドリガンドを開発し、BCR-ABL を分解するSNIPER/PROTACを開発することをめざした。これまでの研究において、多価型ペプチドライブラリースクリーニング法によりBCR-ABLのPHドメインに特異的に結合する多価型ペプチドを複数種同定している。そこで、これらの多価型ペプチドを利用して、ユビキチンリガーゼ(IAP、VHL、CRBN等)のリガンドとスペーサーを介して結合させたSNIPER/PROTACの分子設計を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多価型ペプチドライブラリー法の技術を所有する、同志社大学 西川 喜代孝教授とはSNIPER/PROTACの合成実施計画についての情報共有、議論を十分に重ねている。候補ペプチドならびにユビキチンリガーゼのリガンドの選別はすでに実施済であるため、今年度SNIPER/PROTACを作製する準備が整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
BCR-ABLのPHドメインに結合する多価型ペプチドを組み込んだSNIPER/PROTACを作製する。BCR-ABL分解誘導能の評価は、BCR-ABL陽性がん細胞であるK562細胞、およびイマチニブ耐性T315I変異型BCR-ABLを発現するSK-9細胞を用いる。これらの細胞をSNIPER/PROTACで処理し、BCR-ABLのタンパク量の変化をウェスタンブロット法で調べる。さらにプロテアソーム阻害剤の効果等を検討してBCR-ABLの分解機構を解析する。多価型ペプチドは分子量が大きく膜透過性が問題になる場合も想定されるため、低分子化合物ライブラリーを用いた新規BCR-ABLリガンド化合物の探索も並行して実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、全長のBCR-ABL、あるいは各ドメインの精製タンパク質を調製し、多価型ペプチドライブラリースクリーニング法を用いて、BCR-ABLタンパク質に対する結合力を指標として高親和性結合モチーフを取得する予定であった。しかし、BCR-ABLのPHドメインに結合する多価型ペプチドがすでに同定されており、ペプチドライブラリースクリーニングのステップを省略したため、次年度使用額が生じた。今年度は、当初の計画にはなかった低分子リガンド探索を実施予定であり、次年度使用額はこの実験を遂行するために使用する予定である。
|