研究課題/領域番号 |
22K20712
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
藤森 健司 香川大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00896417)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | (Pro)renin receptor / 膠芽腫 / PRR抗体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はPRR抗体がWnt signaling及びグリオーマ幹細胞を抑制することで、膠芽腫に対し高い抗腫瘍効果を発揮していることを示し、新規治療薬を確立することである。 PRR抗体の抗腫瘍効果をin vitroで評価している。グリオーマ細胞株(U87MG、U251MG、T98G)だけでなく、浮遊培養法で樹立した膠芽腫患者のグリオーマ幹細胞株(MGG23、MGG8)においても検討を行っている。具体的にはWST-1 assayやMTT assay、アポトーシスはフローサイトメトリー、Caspase 3 assay、浸潤能はスクラッチアッセイを用いて検討を行う。グリオーマ細胞株、グリオーマ幹細胞株両方において、抗腫瘍効果を示す結果が出ている。抗体は複数のロットで検討し、最適化を目指している。また、膠芽腫の標準的治療薬であるテモゾロミドとの併用により、相加的な効果を認めた。ウェスタンブロッティングやPCRにて、Wnt signalingの分子や幹細胞マーカーが抑制されていることを証明する。 PRR抗体の抗腫瘍効果をin vivoにおいても評価する。グリオーマ細胞株を免疫不全マウスの皮下に移植し、PRR抗体を静脈内投与し、抗腫瘍効果を検証している。抗腫瘍効果の評価方法としては、生存期間の比較や、腫瘍組織切片を用いた体積比較を予定している。グリオーマ幹細胞株による評価や脳内に定位装置を用いてグリオーマ細胞株を移植した脳腫瘍モデルを作成も検討している。 PRRと幹細胞の関連を、過去に当院で摘出を行ったグリオーマ例の病理検体を用いて評価している。PRRと幹細胞マーカーの免疫染色を行う。染色率を算出し、PRRと幹細胞マーカーの染色率が相関していることを示す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitro studyにおいては、PRR抗体の抗腫瘍効果を認めた。グリオーマ細胞株(U87MG、U251MG)はWST-1 assay、グリオーマ幹細胞株(MGG23)はMTT assayを行い、有意な抑制効果を認めた。また、同細胞株でアポトーシスはフローサイトメトリー、浸潤能はスクラッチアッセイを行い、PRR抗体によるアポトーシスの誘導、浸潤能の抑制を示唆する所見であった。 in vivoにおける抗腫瘍効果の評価も開始している。U87MGを免疫不全マウスの皮下に移植することが可能であった。また、PRR抗体投与を実際に行い、その安全性を確認し、一定の抗腫瘍効果を認める結果を得た。 過去に当院で摘出を行ったグリオーマ例の病理検体を用、PRRと幹細胞マーカーの免疫染色を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
vitro studyにおいて、複数の細胞株における検討を継続して行っていく。また、アポトーシス、浸潤能の評価についても、多数のアッセイによる評価を予定している。ウェスタンブロッティングやPCRにて、Wnt signalingの分子や幹細胞マーカーが抑制されているか、検証する。 vivo studyは皮下腫瘍モデルの樹立に成功したが、まだ少数例における評価にとどまっており、今後多数例における検討を行っていく。皮下腫瘍モデルだけでなく、脳内に定位装置を用いてグリオーマ細胞株を移植した脳腫瘍モデルを作成し、抗腫瘍効果を確認する。また、出した腫瘍病変を用いた免疫染色も予定している。これらの実績や経験を応用して、できるだけ効果的な抗腫瘍効果を発揮させる治療法の組み合わせを検討し、新しい分子標的療法を開発する。 グリオーマの病理検体を用いた検討では、PRRと幹細胞マーカーの染色率を算出し、PRRと幹細胞マーカーの染色率が相関していることを示す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下であり、学会等の旅費を要さなかった。その分研究研究費にあてることができ、研究の進行状況は良好である。
|