研究実績の概要 |
本研究では、血管病変の増生 (血管新生) 時において、中心的役割を担う血管内皮細胞の、発芽・伸長に至る転写調節機構の原理解明を目指し”、血管内皮のシングルセルレベルでの時空間的エピジェネティックス”の解明にとりかかる。 研究計画は、以下の通りである。①Single cell RNA-seqおよびSingle cell ChIP-seqなどの解析技術を用いて、新生血管の各活性化内皮細胞の遺伝子発現パターンを経時的に明らかにする。②NFATシグナルの調節・相互作用因子の遺伝子改変マウスや細胞を用いて、各細胞の遺伝子発現パターンを解析・比較する。③各遺伝子改変マウスの生理学的な解析、および各病態誘導時の病態生理学的な解析を通して、血管内皮細胞の1細胞レベルでのNFATシグナルの活性化調節の変化が如何に各細胞での遺伝子発現変化やその先の表現型の変化に影響するかを明らかにする。 ①におけるSingle cell RNA-seq解析はマウス組織血管およびヒト初代培養血管内皮細胞それぞれで実施し詳細な解析の結果から、VEGF-NFATシグナルによるTip細胞分化やその制御について明らかにできた。また②では、VEGF-NFATシグナルの強力な抑制因子DSCR-1の内皮特異的過剰発現マウスを用いて、NFATシグナル抑制に伴うTip細胞分化不全と各組織の血管形成不全について明らかにした。また③では、DSCR-1内皮特異的過剰発現マウスの網膜血管内皮Single cell RNA-seqから、②のデータを裏付ける形でTip細胞の分化不全を確認できた。 以上の成果は論文発表を進めており、またその一部の成果はiScience誌にて公表することができた(Miyamura, Kamei, et al. iScience. 2024)。
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