血清アルブミンはその受容体を介して腫瘍へ積極的に取り込まれることが知られており、アルブミンをナノ粒子化することにより腫瘍へ送達させる試みが行われているものの、堅固な粒子であることに起因する受容体親和性の低下や抗原性の上昇が課題である。そこで中空構造にすることにより構造柔軟性を向上することで、腫瘍組織への親和性を高めた抗がん剤キャリアを開発することを目的とした。初年度は中空アルブミンナノ粒子を合成するために、ポリスチレンナノ粒子をコアとしてその外側にアルブミンを吸着させ、架橋したのちに有機溶媒でコアを溶解するという手法を検討したが、コアの低い溶解効率が課題であった。本年度においてはコアを炭酸カルシウムに変更することによりキレートを用いて中空型のアルブミンナノ粒子を合成することに成功した。その物性評価として、粒子径の測定やFT-IRなどを行なった。また、アルブミンを蛍光標識することによりがん細胞における取り込み試験を行なった。中空型のアルブミンナノ粒子は中空でないものやアルブミンモノマーと比較してがん細胞において高い取り込み活性を示した。さらに、Balb/cマウスにマウス大腸がん細胞であるC26細胞を移植した担がんモデルマウスにおいて、中空型のアルブミンナノ粒子はアルブミンモノマーよりも高い腫瘍への移行性と低い肝臓移行生を示した。したがって中空型のアルブミンナノ粒子は次世代型のアルブミンベースDDSキャリアとしての応用が期待される。
|