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2022 年度 実施状況報告書

タンパク質飢餓への適応を可能とするチロシンセンシングの分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K20731
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

小坂元 陽奈  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (50962908)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード栄養応答 / アミノ酸 / ショウジョウバエ / チロシン / 核内受容体 / スプライシング
研究実績の概要

本年度は、非必須アミノ酸チロシンの感知実体を明らかにするために、ショウジョウバエを用いた核内受容体に着目した解析と、哺乳類細胞を用いた網羅的なsiRNAスクリーニングを実施した。
まず着目した核内受容体についてリガンド結合部位への点変異を導入し、チロシン有無で変化する表現型についての寄与を検討した。チロシン欠乏に応答して活性化することを見出しているATF4レポーターの蛍光を観察したところ、リガンド結合部位への点変異によりその応答が鈍ることを見出した。同様の結果は当該核内受容体の機能欠損個体でも観察されたことから、チロシンセンシングへの関与が示唆された。しかし、幼虫の摂食量変化などこれまで着目してきた個体全体としての表現型に大きな変化は見られなかった。そこで成虫に視点を移し、チロシン制限で見られる寿命延長や食嗜好性の変化に対する当該核内受容体の寄与を検討中である。
また、この核内受容体の精製タンパク質とチロシンを用いた生化学的なリガンド結合アッセイでは、チロシンとの結合を明確に証明することができなかった。精製タンパク質のDNA結合ドメインの疎水性が高く溶解していなかったことが原因の一つと考えられるため、リガンド結合部位のみを用いた結合アッセイに取り組んでいる。
哺乳類細胞を用いたsiRNAスクリーニングについても終了させ、チロシンセンシングをはじめアミノ酸飢餓やERストレスに共通して関与する可能性のある経路としてスプライシングイベントが浮上した。スプライシングによる転写因子活性制御機構はほとんどわかっていないため、次年度はRNAseqを行うなどして細胞にどのような転写変化が起こっているのか明らかにしていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

核内受容体の寄与について、ATF4活性化レポーターではある程度見られたものの、これまで見てきたショウジョウバエ幼虫の表現型(翻訳・摂食量・mTORC1活性の変化)においては予想していたほどの大きな寄与は見られなかった。しかし成虫ではチロシン制限時に見られる中性脂肪の増加や飢餓耐性の向上、寿命延長、食嗜好性変化といった表現型に関与する可能性が示唆されている。それらの表現型に対する寄与が証明されれば、当該核内受容体の新規機能の発見並びに新規のリガンド応答性を示すこととなり大きな発見となることが期待される。
核内受容体とチロシンの直接の結合を証明することが本研究において重要な点であるが、全長の核内受容体を用いた場合にはアッセイがうまく動かず、リガンド添加による熱変性度合いの変化を元にした結合の証明は叶わなかった。この原因として核内受容体に存在するDNA結合ドメインがタンパク質の凝集を引き起こしてしまうことに起因することが予想されたため、現在リガンド結合ドメインのみを用いたアッセイを構築中である。また、リガンド結合に重要だと予想されるアミノ酸残基に点変異を導入したタンパク質も準備している。L-チロシンやD-チロシンが結合する一方、DL-m-チロシンは結合しないという予想が立っているため、これらを用いて結合アッセイの信頼性を高めたい。
siRNAスクリーニングについては当初の計画通り進めることができた。チロシン感知に特異的な栄養応答経路を探索することが目的であったが、スクリーニングで数多くヒットした候補であるスプライシングファクター群はロイシン欠乏やERストレス化でもATF4活性化に寄与するようであった。当初の目的とは少しずれるが、より一般的なストレス応答に対してスプラシングが関与するということも興味深いため、そのメカニズムについても明らかにしていきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

本研究課題の今後の主な方策として、核内受容体の解析については以下の3点を予定している。核内受容体のチロシンとの結合を生化学的に証明すること(当初予定位していたサーマルシフトアッセイに加え、共同研究でマイクロスケール熱泳動法も使用)、核内受容体の成虫における寄与の検討とそのメカニズム解析を行うこと(寿命延長、タンパク質嗜好性の増加、中性脂肪蓄積、飢餓耐性向上などのチロシン制限で見られる表現型に着目)、核内受容体とATF4の相互作用について証明すること(Bimolecular fluorescence complementation assayに基づいた両者の結合を培養細胞とショウジョウバエ体内でみる、またIP-MSを用いて両者の結合がチロシン有無で変化するかを解析する)。
siRNAスクリーニングから得られた、ATF4活性化におけるスプライシングファクターの寄与についての解析は以下の3点を予定している。スプライシングファクターのノックダウンの有無でチロシン制限をかけた時のRNAseqによるスプライシングイベント変化の解析、スプライシングファクターとATF4の相互作用解析(IP-westernや共染色)、アミノ酸制限やERストレスにおける古典的なATF4活性化経路に対する寄与の検討(western blottingを中心に行う)。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Epidermal tyrosine catabolism is critical for metabolic homeostasis and survival against high-protein diets in Drosophila2023

    • 著者名/発表者名
      Kosakamoto Hina、Miura Masayuki、Obata Fumiaki
    • 雑誌名

      BioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2023.04.20.537645

  • [雑誌論文] Sensing of the non-essential amino acid tyrosine governs the response to protein restriction in Drosophila2022

    • 著者名/発表者名
      Kosakamoto Hina、Okamoto Naoki、Aikawa Hide、Sugiura Yuki、Suematsu Makoto、Niwa Ryusuke、Miura Masayuki、Obata Fumiaki
    • 雑誌名

      Nature Metabolism

      巻: 4 ページ: 944~959

    • DOI

      10.1038/s42255-022-00608-7

    • 査読あり
  • [学会発表] Tyrosine sensing regulates adaptation to changing protein environments in Drosophila2023

    • 著者名/発表者名
      Hina Kosakamoto, Naoki Okamoto, Ryusuke Niwa, Masayuki Miura, and Fumiaki Obata
    • 学会等名
      Mechanisms of Metabolic Signaling
    • 国際学会
  • [学会発表] 非必須アミノ酸チロシンの感知による栄養シグナル制御2023

    • 著者名/発表者名
      小坂元 陽奈
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Adaptive responses to protein restriction governed by nonessential amino acid tyrosine in Drosophila larvae2022

    • 著者名/発表者名
      Hina Kosakamoto, Naoki Okamoto, Ryusuke Niwa, Masayuki Miura, and Fumiaki Obata
    • 学会等名
      55th Annual Meeting of the Japanese Society for Developmental Biology
  • [学会発表] Sensing of the non-essential amino acid tyrosine governs the response to dietary protein intake in Drosophila2022

    • 著者名/発表者名
      Hina Kosakamoto, Naoki Okamoto, Ryusuke Niwa, Masayuki Miura, and Fumiaki Obata
    • 学会等名
      第15回日本ショウジョウバエ研究集会
  • [学会発表] Sensing of the non-essential amino acid tyrosine governs the response to dietary protein intake in Drosophila2022

    • 著者名/発表者名
      Hina Kosakamoto, Naoki Okamoto, Ryusuke Niwa, Masayuki Miura, and Fumiaki Obata
    • 学会等名
      Sensing of the non19th International Congress of Developmental Biology-essential amino acid tyrosine governs the response to dietary protein intake in Drosophila
    • 国際学会
  • [学会発表] チロシン感知が可能とするタンパク質飢餓をしのぐ適応応答2022

    • 著者名/発表者名
      小坂元 陽奈
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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