研究課題/領域番号 |
22K20734
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉原 雅大 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60963618)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | Delta-Notchシグナル経路 / 遺伝子組換えマウス / 発生生物学 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究の交付申請段階では、2022年度にNotch2-Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列を持つプラスミド(Notch2Gal4VP16-bGHpolyAプラスミド)を作製し、同プラスミドを用いて、Notch2遺伝子座エクソン1にCRISPR/Cas9法によりノックインする予定であった。そして、2023年度には、すでに保有する別の二種類の遺伝子組換えマウス(UAS-CreマウスおよびR26GRRマウス)とNotch2-Gal4VP16マウスを交配して得られる、三重遺伝子組換えマウスを組織学的に解析する予定であった。実際、2022年度にはNotch2Gal4VP16-bGHpolyAプラスミドの作製に成功し、direct sequenceによって配列の正確性を確認することができた。しかし他方で、2022年度に実施したENCODE解析では、Notch2遺伝子座エクソン1付近にはプロモーターやエンハンサーと推定される領域が集簇しており、ノックインサイトとしては必ずしも理想的でないことが判明したため、後述するようにノックイン戦略を見直した。 なお、本研究では、Notch2受容体シグナルに加えて、Notch1受容体シグナルの組織学的解析が将来的に必要になる可能性が高い。そこで、2022年度には腎臓においてNotch1受容体シグナルの組織学的解析を行い、論文として査読付き国際英文科学雑誌に投稿したほか、第70回日本実験動物学会(2023年5月24日から同26日まで、つくば市にて)で成果を発表予定である。また、すでに保有するNotch1-Gal4VP16マウス、UAS-Creマウス、R26GRRマウスの飼育および交配を通じて、Notch1受容体シグナルが雄性生殖細胞系列に伝達されないことが判明したため、このことについても論文として査読付き国際英文科学雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の交付申請段階では、Notch2遺伝子座のエクソン1内部にCRISPR targetを設定し、同領域にNotch2-Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列をノックインする計画であった。そのために2022年度には、Notch2-Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列を持つプラスミドを作製し、direct sequenceによってその正確性を確認することができた。その反面、2022年度に実施したENCODE解析では、Notch2遺伝子座のエクソン1付近にプロモーターやエンハンサーと推定される領域が集簇しているため、当初のノックイン計画では内在性Notch2受容体発現に類似して、Notch2-Gal4VP16人工受容体を発現させることの可能性が高くないことが判明した。他方で、Notch2受容体の細胞質内ドメインをコードするエクソン26からエクソン29までの領域にはプロモーターやエンハンサーと推定される領域が疎であることがわかったため、26番目のイントロンに5’アームを、29番目のイントロンに3’アームを設定して、Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列をノックインするほうが理想的であることも判明した。したがって、当初の計画通りにNotch2-Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列を持つプラスミドを作製することには成功したが、ノックインマウス作製を別の方法で行うことに修正したため、自己点検による評価の区分は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、Notch2遺伝子座の26番目のイントロンに5’アームを、29番目のイントロンに3’アームをもちその間に、Gal4VP16融合遺伝子およびウシ成長ホルモンポリA配列をコードするDNA配列を人工合成することで、ノックインマウス作製を加速する。その後は、交付申請段階の計画通り、筑波大学生命科学動物資源センターにてNotch2-Gal4VP16マウスを個体化する。そして、別の二種類の遺伝子組換えマウス(UAS-CreマウスおよびR26GRRマウス)と交配して得られる三重遺伝子組換えマウスを用いて、Notch2受容体シグナルの組織学的解析を行なって論文化を目指す。具体的には、内在性Notch2リガンド分子とタンパク質間相互作用したNotch2-Gal4VP16融合遺伝子から人工転写因子Gal4VP16が切り出され、その応答配列であるUAS依存的に遺伝子組換え酵素Creが発現することで、蛍光タンパクtdsRedが発現する(R26GRRマウスにおいて、Creのはたらく前後でCAGプロモーター制御下にそれぞれ蛍光タンパクEGFPまたはtdsRedが発現する)。すなわち、Notch2受容体シグナル履歴はこの三重遺伝子組換えマウスでは蛍光タンパクtdsRedで標識されることとなり、組織学的解析が可能になる。
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