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2022 年度 実施状況報告書

新規に同定したヒト神経線維束のポリモーダルな解析による高次視覚情報処理の神経基盤

研究課題

研究課題/領域番号 22K20735
研究機関千葉大学

研究代表者

實石 達也  千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (50963039)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード脳神経画像 / 白質解剖
研究実績の概要

本研究は、高次視覚野である側頭葉後方の紡錘状回(FG: Fusiform gyrus)と高次感覚野である頭頂間溝(IPS: intraparietal sulcus)を結合する神経線維束IPS-FGの構造と機能を解析するものである。IPS-FGは、申請者らが白質解剖と神経線維束追跡法(Tractography)によって新規に明らかにした神経線維束であり、本研究では、その神経束の構造や投射部位を精緻に解析し、その機能を明らかにすることを目標としている。
当該年度は、北米のヒトコネクトームプロジェクトのMRI画像データを用い、全脳でのTractographyを実施し、定量的な構造的結合性(Structural Connectivity)を詳細に解析している。また、機能的解析として脳の最も基本的状態となる安静時機能的MRI(resting-state fMRI)解析から算出される安静時ネットワークの機能的結合性(Functional Connectivity)の解析を行ったが、神経線維束IPS-FGの構造的結合性との間に著明な関連性は見られなかった。その解析の中で、頭頂間溝IPSの内側に位置する楔前部へ投射する連合線維は、安静時の機能的結合性と関連性が高いことが明らかになった。現在、機能解析として神経線維束IPS-FGと関連の可能性が最も高いと考えられる高次視覚処理課題の解析をしている。
さらに、構造的解析として白質解剖を実施しており、Klingler法に準拠した凍結融解法を進めている。より正確に精緻に神経束を剖出できるように神経線維束の剥離方法について準備している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当該年度は、今後の神経線維束追跡法(Tractography)での解析の基礎を作成するため、統計解析に十分な量の神経線維束を全脳にわたって再構築した。加えて、脳の脳溝・脳回をもとに構造的に解析し、頭頂間溝(IPS)や紡錘状回(FG)を細領域に区分して、神経線維束IPS-FGの各領域への投射の定量的な解析を実施した。次に、安静時神経ネットワーク(Resting State Network)における機能的結合性を解析した。この解析の結果からは安静時ネットワークに神経線維束IPS-FGとの顕著な関連性はなく、頭頂間溝IPSの内側に位置する楔前部との相関性が見られたため、この結果を英文国際誌に発表している。これらのことより、神経線維束IPS-FGは安静時神経ネットワークではなく課題時に関連する可能性を示唆しており、当初の予定である高次視覚情報処理課題に関連している可能性が高いと考えられ、来年度以降の解析の基礎となる成果である。
同時に、本研究では精緻な白質解剖によって脳神経画像解析の検証を行う予定であるが、本年度は主に脳神経画像の解析に多くの時間を費やし、白質解剖では準備作業の実施にとどまっているため、研究はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

来年度は脳神経画像の解析として機能的解析を中心に行うことを予定している。本研究の対象である神経線維束IPS-FGは、高次感覚野と高次視覚野を結んでいるため、高次視覚情報処理課題に関連している可能性が高いと考えられ、この課題時の状態との相関関係の解析を行う。高次視覚情報処理課題として、図形認識や運動連想との関連性が高いと考えられ、これらを中心とした解析を実施していくことにより、その機能の一端を解明していく。
また、昨年度までに神経束追跡法(Tractography)によって神経線維束IPS-FGの構造的結合性(Structural connectivity)を明らかにした。今後、構造的解析については、脳回・脳溝の解析を踏まえて脳や神経線維束の標準化を行い、神経線維束IPS-FGの投射部位の特徴を明らかにしたいと考えている。さらに、これらの結果をもとに精緻な白質解剖によって神経線維束を剥離し、その周囲の神経線維束も併せて剖出を行う予定である。それにより、神経線維束の走行や投射部位の特徴、他の神経線維束との関連などの神経画像の解析との比較検証を行い、神経線維束IPS-FGの特徴を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当該年次は、オンラインでの学術集会の開催が減少したことにより、会場にて研究成果の発表を行う機会が増加したため、当初の予定よりも旅費が増加した。また、当該年次は、脳神経画像の解析用の計算機(PC)を購入し、主に脳神経画像の解析に注力した。それにより、脳白質解剖の準備にやや遅れが生じ、神経線維束の精緻な剥離を系統的に実施するまでに至らず、当該年次では実体顕微鏡の購入を見送った。
次年度では、詳細に白質解剖解を実施するため実体顕微鏡を購入し、さらに詳細な解析を実施する予定である。加えて、脳の構造・機能の解析をより進めるための計算機(PC)を購入するとともに、学術集会や国際誌にて研究成果の発表を行う予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Characteristic cortico-cortical connection profile of human precuneus revealed by probabilistic tractography2023

    • 著者名/発表者名
      Jitsuishi Tatsuya、Yamaguchi Atsushi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 1936~1936

    • DOI

      10.1038/s41598-023-29251-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 2D and 3D structures of the whole-brain, directly visible from 100-μm slice 7TMRI images2023

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi Hiroshi、Jitsuishi Tatsuya、Hirono Seiichiro、Yamaguchi Atsushi、Iwadate Yasuo
    • 雑誌名

      Interdisciplinary Neurosurgery

      巻: 32 ページ: 101755~101755

    • DOI

      10.1016/j.inat.2023.101755

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヒト脳の安静時状態に関連する神経線維束の解析と検証2023

    • 著者名/発表者名
      實石達也、菊池浩、北城敬子、武藤透、山口淳
    • 学会等名
      第128回 日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] ヒト脳白質解剖と神経画像の解析によるPrecuneusの構造的結合2023

    • 著者名/発表者名
      實石達也、山口淳
    • 学会等名
      新学術領域研究「時間生成学」 2022年度 第2回領域会議
  • [学会発表] Precuneusの神経束追跡法と白質解剖による構造的結合性2023

    • 著者名/発表者名
      山口淳、實石達也
    • 学会等名
      新学術領域研究「時間生成学」 2022年度 第2回領域会議
  • [学会発表] 2D and 3D structures of the whole brain , directly visible from 100 micron slice 7TMRI images.2022

    • 著者名/発表者名
      菊地浩、廣野誠一郎、岩立康男、實石達也、 山口淳
    • 学会等名
      第18回Chibaneuroresearch meeting
  • [学会発表] Cortico-cortical connection profile of Precuneus2022

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Yamaguchi、Tatsuya Jitsuishi
    • 学会等名
      新学術領域研究「時間生成学」 第1回国際シンポジウム
  • [学会発表] 白質解剖と神経画像によるヒト脳の神経束の解析2022

    • 著者名/発表者名
      山口淳、實石達也
    • 学会等名
      生理研研究会「多次元脳形態研究会」
  • [学会発表] 空間的注意に関連するヒト白質神経線維束ネットワーク2022

    • 著者名/発表者名
      實石 達也、山口淳
    • 学会等名
      第20回日本神経理学療法学会学術大会

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公開日: 2023-12-25  

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