CHAC1は発現亢進によりグルタチオンの枯渇をもたらし、酸化ストレスを誘導することで癌の発生や進展に影響を及ぼすとされている。これまでに様々な癌種においてCHAC1の発現について臨床病理学的検討が行われているものの報告結果が異なり、一定の見解は得られていない。 本研究では、胃癌の外科切除標本に対して免疫組織化学法を施行し、臨床病理学的解析を行った結果、免疫組織化学的CHAC1発現はリンパ節転移と相関し、またCHAC1高発現は予後不良因子であることがわかった。 また、in vitroの系で活性酸素種の蓄積や遺伝子変異誘導等を解析するため、ウィルスベクターで恒常的CHAC1を高発現させたAGS細胞の作成に成功し、コントロールAGS細胞と共にRNAseq解析を進めている。 さらに本研究ではCHAC1を胃壁細胞に特異的にノックインしたマウスを作成し、数カ月後の胃粘膜組織に異型を伴う変化を認めた。p53やE-cadherin等の他癌抑制遺伝子のノックアウトマウスとCHAC1のノックインマウスとを交配したマウスも作成に成功しており、これらのマウスを用いてCHAC1過剰発現より発現変化を伴う遺伝子群の検索を進めている。
|