川崎病は日本人小児に多く発症する原因不明の疾患で、全身性血管炎を伴い、特に冠動脈に強く炎症が惹起される。川崎病の病因・病態解明のためには浸潤細胞を含む炎症局所の解析が必要であるが、患者の冠動脈組織を得ることは通常困難であるため、モデルマウスが広く使われており、そのひとつとしてFK565マウスが知られている。本研究は、FK565マウスを用いて、川崎病における冠動脈炎の病態形成にNK細胞が寄与するメカニズムを解明することを目的とした。 病態形成へのNK細胞の関与を調べるため、NK細胞を除去したマウスにおいてFK565の投与により川崎病を誘導したところ、冠動脈炎を発症しないことを確認した。また、リンパ球を全て欠損したマウスにおいてFK565の投与により川崎病を誘導したところ、冠動脈炎を発症しないことを確認した。さらに、心臓および血液のフローサイトメトリーを行い、血液中のNK細胞が除去されていること、および冠動脈を含む心臓内にも炎症細胞が浸潤していないことを確認した。これらの結果に加えて、FK565マウスの心臓から単離したNK細胞におけるケモカイン受容体の発現をリアルタイムPCR法にて検討したところ、FK565マウスおよび未処置マウスの血液中NK細胞と比較して、心臓に浸潤するNK細胞ではケモカイン受容体CX3CR1の発現が亢進していることを見出し、CX3CR1を発現するNK細胞の川崎病の冠動脈炎発症への関与の可能性を明らかにした。
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