研究実績の概要 |
急性感染性および持続感染性ウイルスにおけるNMD機構の影響を解析するため、RNAウイルスの1種であるコクサッキーウイルスB3(CVB3)を複数の細胞株に接種し、細胞生存性を評価した結果、ヒトアストロサイト由来CCF-STTG1, KINGS-1, Becker細胞株およびヒト膵臓がん由来PANC-1細胞株で細胞傷害性なしに持続的に子孫ウイルス粒子を産生することが明らかとなった。以上より、1種のRNAウイルスで急性感染および持続感染両方の感染スタイルにおけるNMD機構の影響、かつ経時的な配列解析が可能となった。 次に、NMD機構の因子であるUPF1/2/3B, SMG1/5/6/7遺伝子ノックダウン細胞をHEK293Tおよびヒトオリゴデンドロサイト由来HOG細胞株を用いて樹立した。これらNMDノックダウン細胞を用いてCVB3、ボルナ病ウイルス(BoDV-1)を接種し感染性をqRT-PCR、IFAおよびtitration assayにより評価した結果、shUPF1およびshUPF2細胞においてCVB3では有意に上清中のウイルスRNA量が上昇し、BoDV-1では細胞内ウイルスゲノムRNA量が上昇した。同様に、NMD阻害剤であるNMDI-14をHEK293T, HOG, Huh7細胞に投与後CVB3およびBoDV-1を接種した結果、細胞内ウイルスRNA量が有意に上昇した。またCCF-STTG1およびPANC-1細胞にCVB3を接種後NMDI-14を投与した結果、同様にウイルスRNA量が上昇した。以上の結果より、NMD機構は急性感染性および持続感染性問わずRNAウイルスの複製を制御していることが示唆された。
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