研究課題/領域番号 |
22K20761
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋好 紗弥香 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70966150)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症 / 乾癬 / 上皮-免疫微小環境 / 免疫細胞 / コレステロール硫酸 / DOCKファミリー分子 |
研究実績の概要 |
皮膚は上皮-免疫微小環境を構築しており、外部の有害因子を排除するメカニズムに偏りが起こると、上皮細胞と免疫細胞が相互に作用して炎症ループを形成する。表皮角化細胞の異常な増殖を呈する“乾癬”は炎症ループが形成される代表的な疾患であるが、炎症が継続・悪化する仕組みはいまだ不明な点が多い。 生体内で合成されるコレステロール硫酸(CS; Cholesterol Sulfate)は、細胞骨格制御因子であるDOCK2によるRac活性化を阻害し、免疫細胞の遊走および活性化を抑制する機能を持つ。また、皮膚組織中にはCSが含まれることが知られている。そこで本研究では、上皮-免疫微小環境の恒常性維持にCSが関わるかどうかを、CS欠損マウス(Sult2b1ノックアウト)とイミキモド誘発性乾癬モデルを用いて検討した。 その結果、イミキモド塗布による炎症状態の皮膚において、野生型と比ベてCS欠損マウスの皮膚の方が、炎症性サイトカインであるIL-17/IL-1b/TNF-aの遺伝子発現が顕著に増加していた。また、マスサイトメトリー並びにフローサイトメトリー解析により、イミキモド塗布後のCS欠損マウスの皮膚において好中球の割合が顕著に増加することがわかった。さらに、CS欠損マウスに対して抗Ly6G中和抗体によって好中球を消失させた場合、イミキモド誘発性皮膚炎の重症度がコントロール群と比べて低下した。 これらのことから、DOCK2阻害作用を有するCSがないと乾癬様皮膚炎が悪化すること、そして好中球が皮膚炎を重症化させている可能性が示された。さらにデータを収集することで乾癬の病態メカニズムの一端を明らかにし、免疫細胞が関わる皮膚疾患の治療法開発に貢献できる可能性がある。なお、本成果を国際誌に投稿するため現在論文準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に予定していた、皮膚においてCSと関与している炎症調節因子や免疫細胞の同定が完了した。さらに、1~2年目に予定していた、同定された免疫細胞がCSと関与していることの検証にも取りかかかっており、整合性も取れている。主要なデータはほぼ取得済みであり、論文投稿の準備を進めている。 以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
CSがマウスの乾癬様皮膚炎を改善するターゲット分子となるかどうかの検討を行う。具体的には、イミキモドを塗布した野生型マウスにCSを塗布、あるいは腹腔内や静脈内に投与し、皮膚炎が軽減されるかを観察すると共に、遺伝子発現と免疫細胞の増減を解析する。また、免疫細胞にin vitroでCSを添加し、炎症性サイトカインが抑制されるかなども検討する。さらに、マウス皮膚の蒸散量測定や皮膚バリアマーカーの免疫染色などを行い、CSの有無における皮膚バリア機能についても検証する予定である。
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