研究課題/領域番号 |
22K20764
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
笠原 良太 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任研究員 (40964127)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | α-Synuclein / ショウジョウバエ / パーキンソン病 / 神経変性 / タンパク質凝集 / 脂肪酸 / トリアシルグリセロール / 脂質 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)においてα-Synucleinの凝集化が生じる原因は未だ不明だが、PLA2G6やVPS13Cをはじめとした複数の脂質代謝関連遺伝子の変異がPDの原因・発症リスクになる。この遺伝学的エビデンスから、脂質恒常性の破綻がα-Synuclein凝集化の原因のひとつであると考えられた。本研究ではこの仮説を踏まえ、α-Synuclein凝集化と関連する脂質分子種および責任代謝酵素の同定を目的とした。 ヒトPD原因遺伝子であるPLA2G6およびVPS13CのPDモデルハエを用いたトランスオミクスデータから脂質分子種としてトリアシルグリセロールやセラミドを、関連する代謝酵素として12遺伝子を候補として同定した。これら遺伝子群を神経特異的に過剰発現・発現抑制し、かつα-Synucleinを過剰発現するハエを作製してα-Synuclein凝集化との関係を調査した。 まず、網膜神経の活動電位(ERG)測定を行いα-Synucleinとの相乗的毒性効果の有無を調査した。その結果、7遺伝子がERGの異常と関連していた。続いて、ERG異常を示した個体で網膜神経にα-Synuclein凝集が生じているかを免疫染色によって評価したところ、トリアシルグリセロール分解酵素であるbmm、および脂肪酸不飽和化酵素であるDesat1の過剰発現個体で顕著に凝集化促進が見られた。また、bmm過剰発現ハエの脳における脂質変動を解析したところ、PDモデルハエで見られたような短鎖脂肪酸や短いアシル基をもったリン脂質の増加が認められた。以上から、トリアシルグリセロールおよびbmmをα-Synuclein凝集化に関連する脂質分子、脂質代謝酵素の有力な候補とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度分として予定していた実験計画のうち、ドーパミン神経の脱落やPLA2G6、VPS13Cとの相互作用を確認することはできなかったものの、ハエモデルを用いた責任代謝酵素のスクリーニングを完了させ、選定された酵素について脳における脂質変動解析まで実施することができた。これにより、α-Synuclein凝集と関連する新規酵素の同定に成功し、PDハエモデルと同様の脂質変動を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は当初の計画通り、ハエモデルで同定された責任酵素候補についてヒト培養細胞を用いたスクリーニングの実施を予定している。また、同定した責任酵素候補について市販の活性阻害薬を用いた試験を、疾患iPS細胞、α-Synuclein伝播マウスモデルにて実施し、PD疾患修飾薬としての実用可能性を探索する。 ハエモデルでは前年度実施できなかったドーパミン神経脱落やPD原因遺伝子との遺伝学的相互作用の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に予定していた一部実験が実施できなかったため、そのために使用する予算を次年度使用額として請求した。 請求分については、予定していた実験に要する資材の購入費としての使用を計画している。
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