研究実績の概要 |
B6SKG雌マウス(12週令)はHRVの結果、B6WT雌マウス(12週令)に比べると副交感神経の活動性が高いことがわかった。B6SKGマウスに迷走神経切断を行い、切断群(Vx)と偽手術群(sham)に分けて、18-23週令にその表現型について評価を行った。Vxは体重増加の推移が緩慢であったが、16週令になると逆転しより増加する傾向になった。B6SKGはB6WTに比べると処置前の貧血を認めていたが、Vx群では上昇しており、B6SKGにおいてはVxで炎症が改善する傾向になることがわかった。糸球体における免疫複合体沈着(IgG,C3)についてもVx群は弱く、WTでは処置前後での差は認めなかった(WTは元々沈着がない)。抗ds-DNA抗体の上昇も軽度であった。FACSではTfh、Th1はVxで低くなる傾向であったが、他のT細胞分画、B細胞では差を認めなかった。 脾臓では脾神経からノルアドレナリン(NAd)が分泌されてCD4 T細胞におけるβ2 アドレナリン受容体に結合することがT細胞の活性化に関与している。B6SKGとB6WTマウスにおけるβ2ARの発現を検討したところ、B6SKGではβ2ARの発現が低かった。B6SKGのshamとVxで比較したところ、B6SKGではVxでβ2ARの発現が軽度の上昇を認めた。 次に血清中のカテコラミン3分画を検討したところ、B6SKGのVxはshamよりNAdが高くなっている傾向にあった。TCRシグナル異常によるT細胞分化異常はノルアドレナリンなどの神経伝達物質によって是正される可能性があることが示唆された。また、VxではB6SKGの糞便のLactobacillus属(SLEでの報告が多い)の減少を認めていることから、自律神経を介した腸内細菌バランスと脾臓におけるT細胞分化異常の是正がSLEの活動性に寄与していることが示唆された。
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