研究実績の概要 |
軟部肉腫の治療成績は化学療法の導入により向上したが、その後数十年にわたり横ばいとなっている。新規治療法の開発が望まれており、免疫治療はその候補となる。我々はこれまで軟部肉腫の腫瘍免疫環境を研究し、粘液型脂肪肉腫の約90%、滑膜肉腫の約30%においてHLA class Iの発現が減弱もしくは消失していることを報告した。細胞表面のHLA class Iの発現低下はNK細胞の活性化と関連しており、HLA class Iの発現が低下している肉腫ではNK細胞療法による治療効果が期待される。しかしながら、軟部肉腫におけるNK細胞療法の治療効果については明らかではない。本研究では軟部肉腫においてNK細胞の効果を示す組織型を明らかにすることを目的としている。 まず初めに、NK細胞を活性化(抑制)する分子の発現を幅広く解析することでNK細胞の治療効果を示しうる組織型を明らかにすることとした。当初の予定通り脂肪肉腫や滑膜肉腫の細胞株を用いてNK細胞を活性化する分子(MICA/B, ULBP1-6)と抑制する分子 (HLA-A, B, C, HLA-E) の発現の発現についてフローサイトメトリーを用いて解析を行ない、粘液型脂肪肉腫、滑膜肉腫においてMIC-A/Bの高発現を確認した。また、肉腫の一種であるEwing肉腫におけるNK細胞の治療効果とGSK3Bの阻害がNK細胞の治療効果を促進することを見出し、国際学会での口演発表を行なった(CTOS 2022, Vancouver, Canada)。今後、軟部肉腫細胞株を用いin vitro, in vivo でのNK細胞の実際の治療効果について解析を進める方針である。
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