本年度の実績として、レナリドミド耐性株がなぜ薬剤耐性化因子であるLAMP2、SORT1を発現するのか、その発現上昇メカニズムの解明と薬剤耐性への寄与を調べた。その結果、前年度から継続していた実験の結果、LAMP2の過剰発現株ではSORT1の発現が増加し、LAMP2ノックダウン株ではSORT1発現量が減少することからLAMP2依存的なSORT1の発現が確認できた。このことはLAMP2とSORT1の発現量の相関からも明らかである。加えて、レナリドミド耐性株由来細胞外小胞上にSORT1が発現していることが明らかであったが、レナリドミド耐性株由来細胞外小胞をSORT1ノックダウン株やLAMP2ノックダウン株に添加したところ、STAT3、p-STAT3の発現量が一部回復することを見出した。これが以前報告したレナリドミド耐性株でSTAT3の発現が亢進するメカニズムの一端である可能性が示唆された。レナリドミドの基質であるセレブロンとLAMP2の発現量にも一定の相関がみられていたが、詳細なメカニズムまでは特定できなかった。 また、耐性株が分泌する細胞外小胞のsmall-RNA seqを行い、内包されるマイクロRNAの解析を行った。その結果、レナリドミド耐性株由来の細胞外小胞には既知の薬剤耐性関連マイクロRNAがいくつか過剰に含まれていることが明らかとなった。これらの結果で日本骨髄腫学会や日本分子標的治療学会などで報告を行った。
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