研究課題/領域番号 |
22K20804
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
谷合 智彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60961860)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 癌免疫微小環境 / 複合免疫療法 / MYC |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、MYC遺伝子関連肝癌の癌免疫微小環境を明らかにすることであり、さらには肝細胞癌に対する新たな革新的治療戦略を確立することである。 本年は、まずプレリミナリー実験の検証として、マウスの肝細胞癌株Xに対して、Trp53ノックアウトをした細胞株XPと、さらにMYCを過剰発現させた細胞株XPMを作製した。それぞれの蛋白発現をウェスタンブロットで評価し、Trp53ノックアウト、MYC過剰発現を確認した。以上の実験により、本研究を遂行する上で必要な細胞株の作成が完了した。 次に細胞株XPMをヌードマウスに皮下移植し、造腫瘍性を有することを確認した。形成された腫瘍を初代培養することで、XPMのいくつかのクローン株を作製した。以上の操作により、今後の実験において複数のクローン株での評価、比較を行うことが可能となった。 上記細胞株の形態および機能評価のためin vitroの実験を施行した。まず電子顕微鏡による形態学的評価では、XPに比べXPMでは核小体の顕在化を認めており、細胞周期の異常が示唆された。そこでフローサイトメトリーにより細胞周期を評価したところ、XPMではXPに比べ、S期およびG2/M期の細胞割合が大きく、やはり細胞周期異常を示唆する結果であった。以上の結果から、作成した細胞株XPMは細胞周期異常を伴う細胞株であり、高悪性度肝細胞癌を示唆することが示された。 XPMを同系統のC57BL/6マウスに皮下移植したところ高度な増腫瘍性を有する腫瘍が形成された。上記結果はin vitroの実験で示唆された細胞周期異常に矛盾しない所見である。 今後は同系統移植腫瘍の病理学的解析および同腫瘍での複合免疫療法の奏効やその機序について評価をおこなう方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、MYC遺伝子関連肝癌の癌免疫微小環境を明らかにすることであり、さらには肝細胞癌に対する新たな革新的治療戦略を確立することである。 本年は、まずプレリミナリー実験の検証として、マウスの肝細胞癌株Xに対して、Trp53ノックアウトをした細胞株XPと、さらにMYCを過剰発現させた細胞株XPMを作製した。それぞれの蛋白発現をウェスタンブロットで評価し、Trp53ノックアウト、MYC過剰発現を確認した。以上の実験により、本研究を遂行する上で必要な細胞株の作成が完了した。 次に細胞株XPMをヌードマウスに皮下移植し、造腫瘍性を有することを確認した。形成された腫瘍を初代培養することで、XPMのいくつかのクローン株を作製した。以上の操作により、今後の実験において複数のクローン株での評価、比較を行うことが可能となった。 上記細胞株の形態および機能評価のためin vitroの実験を施行した。まず電子顕微鏡による形態学的評価では、XPに比べXPMでは核小体の顕在化を認めており、細胞周期の異常が示唆された。そこでフローサイトメトリーにより細胞周期を評価したところ、XPMではXPに比べ、S期およびG2/M期の細胞割合が大きく、やはり細胞周期異常を示唆する結果であった。以上の結果から、作成した細胞株XPMは細胞周期異常を伴う細胞株であり、高悪性度肝細胞癌を示唆することが示された。 XPMを同系統のC57BL/6マウスに皮下移植したところ高度な増腫瘍性を有する腫瘍が形成された。上記結果はin vitroの実験で示唆された細胞周期異常に矛盾しない所見である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、Trp53ノックアウトとMYC過剰発現により高悪性度肝細胞癌の特徴を有する細胞株を作製した。 今後はまず、XPMを同系統C57BL/6マウスに移植した皮下腫瘍を摘出し、腫瘍血管、腫瘍内リンパ球、マクロファージといった癌免疫微小環境について免疫染色にて評価する。さらに、同移植モデルに免疫チェックポイント阻害剤、血管新生阻害剤、複合免疫療法を行い、その奏功を評価し、摘出腫瘍の癌免疫微小環境を再度評価する。以上の工程から、複合免疫療法がどのように癌免疫微小環境に影響を及ぼすかを明らかにする。 細胞株XPおよびXPMをRNAシークエンスに提出することで、MYC過剰発現により発現変化した遺伝子を同定し、造腫瘍性に関与したと考えられる遺伝子候補を得る。 最後に同遺伝子の発現をXPMにて過剰発現、またはノックアウトを行うことで、同遺伝子が癌免疫微小環境におよぼす影響について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗状況としてはおおむね当初の計画と変更なし。学会参加費が当初の予定より少額で済んだこと、消耗品の使用費も当初の予定より少なく済んだため、次年度使用額が生じた。 次年度については、免疫染色や動物実験、薬剤使用などさらに費用が掛かることが予想されるため、本年度の繰越金を使用する予定である。
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