研究課題/領域番号 |
22K20806
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
辻野 拓也 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (60937407)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 前立腺がん / PARP阻害 / CRISPRスクリーニング |
研究実績の概要 |
〈背景と目的〉去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の新たな治療薬であるPARP阻害剤Olaparib(AZD-2281)は現時点で、BRCA1/2変異陽性症例のみに有効性が示されており、その他の有効性を示す遺伝子変異の解明と薬剤抵抗性を示す遺伝子変異の解明、およびその症例への代替治療薬の選択が課題となっている。本研究では、BRCA1/2のような遺伝子バイオマーカー同定および薬剤耐性メカニズム解明による新規治療法開発を目的として前立腺がん細胞株においてOlaparib治療を併用した約19,000遺伝子対象のCRISPRスクリーニングを施行した。 〈現在までの実績〉 4つの前立腺がん細胞株におけるCRISPRスクリーニング解析により、その機能喪失によってPARP阻害剤へ高感受性を示す候補遺伝子として67遺伝子、薬剤耐性を示す候補遺伝子として103遺伝子を同定した。高感受性を示す遺伝子変異の中から、前立腺がん患者において約14%にその遺伝子欠失を有するMMS22L遺伝子を同定し、MMS22L欠失細胞モデルにおけるPARP阻害剤への高感受性を実証した。さらにそのメカニズムが相同組み換え修復機構の主要タンパクであるRAD51誘導能減弱に伴うDNA損傷促進であることを解明した。 また、薬剤耐性を引き起こす候補遺伝子の中からCHEK2、TP53、E2F7それぞれの欠失細胞がPARP阻害剤へ耐性を示すことを実証し、さらに薬剤耐性のメカニズムとしてCHEK2-TP53-E2F7 経路が引き起こす相同組み換え修復遺伝子の発現上昇を解明した。さらにCHEK2欠失細胞モデルおよび同細胞皮下移植マウスモデルを用いて、その薬剤耐性克服のための代替療法としてATR阻害剤とPARP阻害剤のコンビネーション治療の有効性を実証した。今後さらなる検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、CRISPRスクリーニング解析結果からOlaparibの感受性、および抵抗性に関与する遺伝子の同定、およびそれらのメカニズム解明、検証実験を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今回のCRISPRスクリーニングで同定された遺伝子より、前述のMMS22LやCHEK2以外の検証実験を予定している。さらに、橋渡し研究として、同定されたMMS22L遺伝子変異の実臨床における有用性検討のため、CRPC患者血液検体を用いて、血液循環腫瘍DNA(ctDNA)を抽出することにより実臨床における変異頻度を解析する予定である。ctDNAによる解析とCRISPRスクリーニング結果からより実臨床に応用可能な遺伝子変異の同定が可能となると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究プロジェクトが順調であり、次年度に予定されていた研究項目の一部が完了しているため、次年度の使用計画を再評価した。具体的には前述の通り、患者血液検体から抽出するctDNAMMS22L遺伝子変異の実臨床における変異頻度の解析を施行予定である。その他、CRISPRスクリーニング解析から得られた新たな遺伝子について検証実験を予定している。
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