研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の新たな治療薬であるPARP阻害剤Olaparib(AZD-2281)は、BRCA1/2変異陽性の症例のみに有効性が示されており、その他の有効性を示す遺伝子変異の解明と薬剤抵抗性を示す遺伝子変異の解明、およびその症例への代替治療薬の選択が今後の課題である。本研究では、BRCA1/2のような遺伝子バイオマーカー同定および薬剤耐性メカニズム解明による新規治療法開発を目的として前立腺がん細胞株においてOlaparib治療を併用した約19,000遺伝子対象のCRISPRスクリーニングを施行した。4つの前立腺がん細胞株におけるCRISPRスクリーニング解析により、PARP阻害剤への感受性遺伝子として67遺伝子、薬剤耐性遺伝子として103遺伝子を同定した。高感受性を示す遺伝子変異の中から、前立腺がん患者において約14%にその遺伝子欠失を有するMMS22L遺伝子を同定し、その感受性変化を実証することにより遺伝子バイオマーカーとしての可能性が示された。また、抵抗性遺伝子としてCHEK2欠失を同定し、そのメカニズムを解明するとともに代替治療法開発PARP阻害剤+ATR阻害剤療法を行った。さらにその他の候補遺伝子としてmitochondrial complex Iに関連する遺伝子が感受性遺伝子として同定され、その欠失細胞および阻害剤を用いてPARP阻害剤の感受性変化およびメカニズムの検証を行っている。上記の結果は今後の前立腺がんだけでなくPARP阻害剤治療およびCRPC治療全体を前進させるものであると考えられ、今後も継続していく方針である。
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