研究課題/領域番号 |
22K20825
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
賀島 肇 岡山大学, 大学病院, 医員 (80965187)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / オルガノイド / がん関連線維芽細胞 / FAP |
研究実績の概要 |
2023年5月までに未治療の食道扁平上皮癌8症例から検体を採取し,がん組織のオルガノイド作成および線維芽細胞の初代培養を行っている. 食道がん患者由来のCAFsの抽出とのゲノム解析: 採取した検体のうち線維芽細胞の初代培養成功率は87.5%(7/8)であった.一部の検体で感染のため培養が不成功に終わったが,成功率としては良好であった.本格的なゲノム解析は未施行であるが,個々の症例についてがん関連線維芽細胞(Cancer associated fibroblasts: CAFs)特異的マーカーであるFAPやα-SMA,細胞外基質の構築に関わるcollagenタンパクやマトリックスメタロプロテアーゼの発現を免疫染色やimmunoblotでまずはプロテオミックに評価している. 食道がん患者由来のオルガノイドライブラリ構築と個別化治療にむけた実験: 採取した検体のうち食道扁平上皮癌オルガノイドの樹立成功率は62.5%(5/8)であった.ライブラリの目標検体数には達している.手技が確立された腺癌オルガノイドと比較して扁平上皮癌オルガノイドの樹立成功率は,71.4%(Kijima et al.2018. CMGH)ともともと低く,開始初期の手技的問題があったことも考慮すると妥当な確率と考えられる.症例の蓄積により成功率の増加が見込まれる.また近傍の正常食道扁平上皮組織からもオルガノイド作成を行っているが,こちらは樹立成功率が87.5%(7/8)とがん組織より高かった.個々の症例ごとにオルガノイドをゲル内で固定しパラフィン包埋切片を作り,H&E染色およびP53やKi63の免疫染色を行うことでそれぞれの特徴を評価し層別化を試みている.オルガノイドの樹立に成功した症例の多くは現在術前化学療法中であり,今後手術加療が行われた際に切除検体の評価を行い腫瘍の特性や術前治療効果判定などを行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維芽細胞の初代培養成功率と扁平上皮癌オルガノイド樹立成功率および合計件数は目標に達しており,順調に研究は進んでいると考えられる.個々の遺伝子,転写因子の解析は少しずつ進んでいるがゲノムワイドな解析はまだ行われていないので,「概ね順調」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
がん関連線維芽細胞およびオルガノイドの症例数をさらに積み重ねて,本年度中には20例以上のライブラリ作成を行うことを目標にしている.シングルセルRNA解析を含めたゲノミックな評価も進めていく予定である.また,症例によっては術前治療を終えて外科的切除およびその後の術後サーベイランスに移行するものもあるので,樹立したオルガノイドおよびがん関連線維芽細胞の各種実験結果と症例経過を比較する.これによりオルガノイドで評価できる腫瘍学的特徴や化学療法反応性などの解析を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム解析の外部委託の価格高騰に伴い前年度費用の一部を次年度に繰り越して研究を行うことが望ましいと判断した.
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