研究課題
本研究では正常な血液細胞に遺伝子変異が蓄積する原因を解析し、さらに年齢や飲酒、喫煙などの環境因子との関連を調べることにより、血液腫瘍の発症機序を明らかにすることを目的として研究を行った。具体的には、単一細胞由来の血液細胞コロニーを作製して全ゲノム解析を行うことにより、正常な血液細胞に獲得される遺伝子異常の蓄積量や、塩基置換などのパターン(変異シグネチャー)の解析を行った。健常人由来血液検体を得るため、がん検診受診者から本研究に同意を取得して、末梢血検体を収集した。合計、100名から末梢血検体を収集して、喫煙歴、飲酒歴、年齢などの情報から症例を選定した。新生児のデータとして収集した研究用臍帯血1検体および検診受診者11例から174個の造血コロニーを作製して全ゲノム解析を行なった。同一症例から採取したbulkの末梢血(顆粒球)検体を正常コントロールとして使用して、がんのゲノム解析に使用されているパイプライン(genomon2)を用いて解析し、正常な血液細胞に獲得される遺伝子異常(変異、挿入欠失、構造異常、染色体コピー数異常)を解析した。その結果、正常血液細胞では1年間に約14個の変異が蓄積していると推定され、これは過去の欧米からの報告と概ね一致していた。変異シグネチャーの解析では過去に骨髄性腫瘍で報告されていたSBS1、SBS5が同定された。また、遺伝子変異の蓄積量には個人差がみられ、生活歴や遺伝子多型との関連を解析している。さらに、系統樹解析など単一細胞由来検体のゲノムデータの解析パイプラインを構築して解析した。PPM1D変異などドライバー変異を獲得したクローンが同定されたため、ドライバー変異を獲得したクローンの特徴についてRNA-seqにより変異クローンの特徴を解析している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)
Nature
巻: 620 ページ: 607~614
10.1038/s41586-023-06333-9