研究課題/領域番号 |
22K20846
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井出 真太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10963069)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | ポドサイト / フェロトーシス / 糸球体障害 / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
申請者は、全身でフェロトーシスを誘導されるマウスが著明な尿蛋白を呈することに着目し、糸球体、特に尿中への蛋白漏出を防ぐ役割を有するポドサイトの障害にフェロトーシスが関与している可能性を考えた。本申請研究は、正常及び障害ポドサイトにおけるフェロトーシスストレスの役割、その機能を解析し、糸球体障害においてフェロトーシスが新規治療標的になりうるかを明らかにすることが目的である。令和5年度ではそれぞれの研究計画について下記のような結果が得られた。 研究計画1 定常状態のポドサイトにおけるフェロトーシスの機能解析 ポドサイトにフェロトーシスストレスを誘導させることを目的に、フェロトーシスを抑制する主要因子であるGpx4遺伝子をドキシサイクリン誘導性かつポドサイト特異的に欠損するマウスを作成した。そのマウスにGpx4欠失を誘導し、誘導後4週、8週で解析を行った。誘導後4週の時点で糸球体、ポドサイトにおけるGPX4蛋白の欠失を認めGpx4 deletionが十分に誘導されていることを確認した。一方で、いずれのタイムポイントにおいても尿蛋白は軽度上昇傾向であるものの有意差は認めなかった。加えて、組織学的所見においてもポドサイトや糸球体障害を示唆する所見は確認できなかった。 研究計画2 糸球体傷害におけるポドサイトのフェロトーシスの機能解析 糸球体障害におけるフェロトーシスの機能解析のため、高血糖、高血糖+高脂質食モデルマウスにおける糸球体障害モデルを作成し、フェロトーシスについて検討を行った。その結果、過酸化脂質の蓄積や少量ながらTUNEL陽性細胞の出現を認めた。現在、研究計画1で作成したPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/floxマウスに上記の糸球体障害を誘導することで、より表現形が増幅されるかを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度では、主にポドサイト特異的にフェロトーシスを誘導するマウスであるPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/flox及びPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/flox;tdTomatoを作成を完了する予定であったが、マウス輸送の事故に伴い、目的のマウスの交配が遅れ、2年目の研究計画にも影響した。加えて、当初予想していたよりもPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/floxの表現形が軽度であったことから、当初よりも多い複数のタイムラインや糸球体障害モデルを加えて実験を行っている。ポドサイトでの表現形が軽度であったことは、フェロトーシスに脆弱な尿細管細胞とは対照的であり、この2つの細胞種を比較することで新たなフェロトーシスに対する抵抗因子の発見につながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初本申請研究は2年での予定であったが、上記のような問題による進捗の遅れもあるため、もう一年期間を延長する予定とした。これにより、当初の研究計画、ポドサイトにおけるフェロトーシスの機能だけでなく、なぜポドサイトが尿細管細胞に比較してフェロトーシスに耐性を有しているかについて明らかにする。このことは、フェロトーシスに感受性を有する尿細管に対する新たな治療標的の創出にも繋がる。今後の研究の推進方策は以下の通りである。 研究計画 1: 定常状態のポドサイトにおけるフェロトーシスの機能解析 作成したPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/floxマウスを用いて、糸球体障害時の表現形の表現形について解析を行う。表現形に差が出るタイムコースや糸球体障害モデルを用いて、糸球体を中心とした単一細胞シークエンスを行いフェロトーシスによる糸球体各種細胞への影響を評価、解析する。 更に培養細胞、特にヒトポドサイト細胞、ヒト尿細管細胞を用いることでフェロトーシスの感受性を評価し、どのような因子がフェロトーシス感受性の違いをもたらしているかについて検討する。 研究計画 2: 糸球体傷害におけるポドサイトでのフェロトーシスの機能解析 種々の糸球体障害モデルにおいて、ポドサイトにフェロトーシスが誘導されていることが示された。今後は既存の薬剤を用いることでこのフェロトーシスが抑制できるかどうか確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請研究は本年度に作成したPodocin-rtTA: tetO-Cre; Gpx4flox/floxマウス腎臓を用いた単一細胞シークエンスを行う予定であったが、当初予想していたよりも腎臓の表現形が軽度であった。そのため、定常状態での単一細胞シークエンスの予定を変更し、糸球体障害を加えたモデルで行う方針とした。以上の理由より、本年度の費用の一部を次年度に繰り越し、次年度使用額が生じている。
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