研究課題/領域番号 |
22K20847
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝澤 慶一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10791957)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 尿中細胞外小胞 / 小児腎疾患 / ナノ粒子追跡解析 |
研究実績の概要 |
国内の小児腎臓疾患を診療している8施設に協力依頼し収集した検体のうち、ナノ粒子追跡解析(NTA)に必要なサンプル量が十分確保できる20検体(健常児3例、小児CKD患者17例)を用いて、Tim4蛋白質アフィニティー法で尿中EVサンプルを精製した。405nmのレーザーと高感度のsCMOSカメラを搭載したNanoSight LM10 systemによるNTAを施行したところ、サンプルによって観測される粒子数に大きなばらつきを認め、正確な測定を可能とする適切濃度を検討の上、20サンプルの解析を完了した。ストークス-アインシュタインの関係式に基づき、個々の粒子のブラウン運動から健常児3例の尿中EVの粒子数、粒子径のデータを取得した。さらにこれらのデータを解析し、粒子のピークサイズの密度も明らかにした。得られた物理的パラメーターを用いて、健常児と小児CKD患者の2群比較を行ったところ、粒子数と粒子径には、統計的な有意差を認めなかったが、ピークサイズの密度は、小児CKD患者で有意に低下していることが判明した。さらに、尿浸透圧が粒子数、粒子径に影響を与えるという報告をうけ(Blijdorp et al.,2021)、NTAに使用した尿検体から尿中クレアチニン(uCr)値を測定した。粒子数とuCrは正の相関があり、両者は粒子径と負の相関があった。さらに、希釈尿から精製した尿中EVは濃縮尿から精製した尿中EVより、40-150nmのサイズの粒子の割合が減少し、150-1000nmのサイズの粒子の割合が増加するという結果が得られた。上記内容を含めて論文報告した(Takizawa K et al, iScience. 2022)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児尿検体から精製した尿中EVサンプルによるNTAの条件を検討し、物理的パラメーターのデータ取得が可能であることが判明した。さらに、粒子数、粒子径などの各データによるin silico解析も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ流路粒子解析による表面電位のデータ取得を目指し、小児CKDの各原因疾患による物理的パラメーターの特徴を継続的に解析する。さらに、既に取得している尿中EVのプロテオームデータを用い、粒子数、粒子径や電位と関連する発現分子変動を同定する。また尿中クレアチニンや腎機能等の臨床的なパラメーター、腎予後との関連解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
小児尿検体から精製したサンプルを用いたナノ粒子追跡解析が想定よりスムーズに進んだため、試薬品代が節約できた。また、受理された論文の掲載料も予定より安価であった。
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