研究課題/領域番号 |
22K20848
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 和彦 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70963221)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | リファキシミン / 胆汁酸 / 脂肪肝 / 肥満 / Firmicutes / Bacteroidetes / 細菌叢 / 小腸 |
研究実績の概要 |
リファキシミンは肝性脳症などの治療に用いられる難吸収性の抗菌薬であるが、便の細菌叢を変化させないことが知られている。我々は、リファキシミンは胆汁酸に依存して抗菌活性を発揮するため、便中の細菌叢を変化させず、小腸の細菌叢を変化させているのではないかという仮説を立て、リファキシミンが小腸細菌叢のLactobacillaceae、Firmicutesを減少、Bacteroidetesを増加させるという結果を、本研究前に得ていた。同研究は、昨年度中にGut Pathogensにacceptされた。 脂肪肝患者では腸内のFirmicutesが増加するということは複数の研究で報告されていた。脂肪の代謝には大腸よりも小腸が関与しているため、リファキシミン投与により高脂肪食負荷マウスの小腸細菌叢のFirmicutesを減少させ、肝障害を改善しうるのではないかと仮説を立て、本研究を実施している。 まずPilot studyとして、6週齢のC57/BL6に対して、高脂肪食を12週間投与し、肝細胞の脂肪化が起こることを確認した。また、高脂肪食負荷マウスの、空腸、回腸、便の細菌叢を解析した。 その結果、高脂肪食負荷マウスの空腸、回腸、便において、Firmicutes門の高い割合を占めるErysipelotrichaceaeや、Clostridiaceaeが、通常食マウスと比較して増加するという結果を得た。また、それに対してBacteroidetesが減少する傾向が見られた。 Erysipelotrichaceaeは既報においても高脂肪食で増加することが知られており、脂質代謝に影響することが知られている。我々の以前の研究でリファキシミンはFirmicutesを減少させる効果を示しており、こうした高脂肪食負荷による細菌叢の変化は、リファキシミンの効果が期待できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所内での書類申請に事務的な時間がかかり、動物実験の開始が想定より1-2か月ほど遅れた。また、高脂肪食により細菌叢が変化することを確認してからリファキシミン投与を開始する方針としたため、細菌叢が安定するまで待つ目的で、購入した野生型マウスを2世代継代した。そのためマウスへの高脂肪食開始が遅れ、合計で6か月ほどの遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
6月には予定している動物実験は終了し、通常食+非リファキシミン群、高脂肪食+非リファキシミン群、高脂肪食+リファキシミン群の合計3グループ (n=9ずつ)が終了する予定である。その後、細菌叢解析、血液解析(肝障害の改善の有無)、腸液の胆汁酸解析を実施する予定で、1月頃までに解析を終了して結果をまとめることを目標としている。
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