転写因子Helios(遺伝子名IKZF2)は制御性T細胞(Tregs)の安定化に関わり、natural Tregsのマーカーであることが報告されているが、ナイーブCD4+T細胞での発現についてはほとんど知られていない。本研究では、様々な年代のナイーブCD4+T細胞におけるHelios の発現を評価した。 予定通り、早産児・正期産の臍帯血及び、乳児から高齢成人までの末梢血を合計110人分を回収し単核球分離後に凍結保存した。フローサイトメトリーでナイーブCD4+T細胞をソーティングし、RNA、DNA、タンパク質を抽出した。RNAの評価はRNA-seqを予定していたが、検体数を増やすためにreal time PCRにて評価した(評価項目はACTBとの発現比)。Heliosの評価はフローサイトメトリーの細胞内染色とウェスタンブロッティングで評価した。 新生児期以降、IKZF2の発現と年齢の間には非常に強く(R^2 = 0.87)、有意な(p < 0.001)、相関関係があった。IKZF2の発現は10年ごとに40%ずつの低下があり、新生児と40歳を比較すると約8倍、新生児と80歳の高齢者はおおよそ60倍もの発現差があった。 Helios自体の発現も、新生児期と比較すると、乳児期以降は成長・加齢に伴い急激な低下がみられた。 成長・加齢に伴う血液中のナイーブCD4+T細胞の減少はよく知られているが、質的な変化については不明な点も多い。ヒトは胎児、新生児、乳児、小児、成人、老年と成長・老化に伴い、臨床症状上は免疫寛容優位から免疫応答優位に変化していく。今回示した若年のナイーブCD4+ T細胞におけるHelios(IKZF2)の高発現と、成長・加齢に伴う低下は、このような臨床上の変化と関わっている可能性を考える。本研究は国際学会にて発表を行った。今後発現調整の解析も含めて論文発表の予定である。
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