研究課題/領域番号 |
22K20851
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤井 悟 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (00964751)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎とクローン病の2疾患からなる。いずれも消化管に慢性炎症と難治性潰瘍を引き起こす難病であり、その発病要因は不明で、根本的治療法も確立していない。本研究では、研究代表者らがマウス大腸上皮細胞を用いて樹立した独自の2次元培養モデルを患者由来ヒト腸上皮細胞に応用し、炎症性腸疾患患者の上皮で繰り返される「傷害→再生→治癒」過程の全貌を明らかにすることを目的とする。また、マウス腸上皮の再生過程では細胞の「胎児化」が必須な役割を担っているが、ヒト腸上皮でも同様に細胞の「胎児化」が誘導されるかを検証すると共に、細胞の「胎児化」がヒト腸上皮再生過程でどのような役割を担っているかを解析することを通じて、炎症性腸疾患の病態解明を試みる。 2022年度は当初の計画に従い、マウス細胞を用いて樹立された2次元培養法をヒト細胞用に最適化し、炎症性腸疾患の腸粘膜で繰り返される「傷害→再生→治癒」の反復過程をin vitroで再現可能な2次元培養モデルの構築を目的とした実験を行った。マウスとヒトの腸上皮3次元培養では培養に必要な因子が異なるため、2次元培養でも両者の培地条件が異なることが予想された。よって、3次元培養の培地組成の差異に着目しながら種々の培地条件を検討し、培養条件の最適化を進めた。その結果、マウス細胞と同じ培地にて患者由来ヒト大腸上皮細胞も2次元培養可能であり、ヒト腸上皮のin vivo組織像と酷似した細胞構造を再現可能であることを確認した。さらなる培養条件の最適化を進め、汎用性の高い安定した培養条件の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、マウス大腸上皮細胞で開発した2次元培養法を患者由来ヒト大腸細胞用に最適化を進め、マウス細胞と同様に、患者由来ヒト大腸細胞でもin vivoに酷似した細胞構造を再現できることを確認した。さらに、ヒト腸上皮の3次元培養で必須と考えられているいくつかの因子を除いても2次元培養の継続が可能であることを新たな知見として確認した。よって、本研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にヒト細胞用に最適化した2次元培養モデルを用いて、患者由来ヒト大腸上皮細胞の長期観察および「傷害→再生→治癒」過程の反復を試みる。そして、「傷害→再生→治癒」に関わるヒト細胞独自の分子メカニズムに迫ると共に、上皮細胞の「胎児化」が再生過程でどのような役割を担っているかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等の消耗品が計画当初より廉価で購入可能であったこと、積極的に廉価な物品を選択して購入したこと、培養条件の最適化が計画通り順調に進行したことなどによって、当初の計画よりも支出を大幅に抑えることができた。 使用計画: 本研究は患者由来サンプルを扱っており、検討サンプル数を拡大して解析することでより実験精度を高めることが可能である。昨年度の計画が順調に進んだため、本年度はサンプル数を拡大して研究計画を進める予定であり、当初の計画よりも試薬などの消耗品を増量して購入する予定である。また、多数のサンプルを用いて網羅的遺伝子発現解析も行う予定である。
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