研究課題
炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎とクローン病の2疾患からなる。いずれも消化管に慢性炎症と難治性潰瘍を引き起こす難病であり、その発病要因は不明で、根本的治療法も確立していない。本研究では、研究代表者らがマウス大腸上皮細胞を用いて樹立した独自の2次元培養モデルを患者由来ヒト腸上皮細胞に応用し、炎症性腸疾患患者の上皮で繰り返される「傷害→再生→治癒」過程の全貌を明らかにすることを目的とした。また、マウス腸上皮の再生過程では細胞の「胎児化」が必須な役割を担っているが、ヒト腸上皮でも同様に細胞の「胎児化」が誘導されるかを検証すると共に、細胞の「胎児化」がヒト腸上皮再生過程でどのような役割を担っているかを解析することを通じて、炎症性腸疾患の病態解明を試みた。2023年度は当初の計画に従い、前年度にヒト腸上皮細胞用に最適化した2次元培養モデルを用いて、患者由来大腸上皮細胞の長期観察および「傷害→再生→治癒」過程の反復を試みた。そして、それぞれの過程における腸上皮細胞の形態的および機能的差異の解析を行った。各過程の細胞は特有の遺伝子群の発現や細胞構造を示し、傷害時の細胞は一部の胎児化遺伝子を発現していることが明らかとなった。本研究の成果の一部は、bioRxivに公開した(題名「Long-Term Monolayer Cultivation Captures Homeostatic and Regenerative Features of Human Colonic Epithelial Cells」、doi: https://doi.org/10.1101/2024.01.01.573838)。今後は、この新規モデルの開発・応用を続け、腸上皮細胞の「胎児化」と再生機構や炎症性腸疾患の病態との関連性の理解を深め、炎症性腸疾患の病態解明や新規治療法の開発を目指す。
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10.1101/2024.01.01.573838