これまでに我々は,1型アンジオテンシンII受容体(AT1R)結合タンパク質(AT1R-associated protein:ATRAP)欠損が加齢性腎障害を促進させるとともに,この機序にATRAPのAT1R非依存的経路が関与することを示した.この詳細な機序を解明する端緒として,我々はATRAPとGlutaminase(GLS)の関連性に着目した.GLSは新規老化関連因子として報告され,GLS阻害薬は老化細胞除去薬として抗加齢分野で注目されている.そこで,本研究では「腎臓においてATRAP発現調節異常がGLS機能を介して加齢性腎障害の進行に関与し,ATRAP発現上方制御は抗腎老化作用を発揮する」と仮説を立てた.本研究では,細胞と生体レベルで加齢性腎障害におけるATRAPとGLSの関連性および病態生理学的意義を究明することを目的とした. まず初めに我々はATRAPとグルタミン代謝の関連性に焦点を当て,その中でも特にATRAPとグルタミントランスポーターの相互作用について解析を進めた.これまでに免疫沈降法を用いて,細胞レベルで分子的相互作用について検証を行い,さらにATRAP全身性高発現遺伝子改変マウスにおけるグルタミントランスポーター発現解析を行った。これらの結果からATRAPとグルタミントランスポーターの関連性は徐々に明らかにされつつあるが,ATRAPとGLSとの関連性は依然として不透明であるため引き続き科学的検証を行う必要がある.
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