研究課題/領域番号 |
22K20864
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
バータルジャフ・チントグトフ 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (70962744)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | DNAセンサー / 炎症反応 / 心血管病 |
研究実績の概要 |
動脈硬化を基盤とする心血管病での無菌性炎症が、炎症と細胞死を制御するNLRP3インフラマソームを介して惹起されることが示されている。一方で最近、2本鎖(dsDNA)を認識して形成されるAIM2インフラマソームも無菌性炎症を惹起することが報告されているが、その心血管病態での役割や、NLRP3とAIM2の使い分けについては、未だ不明である。申請者はこれまで、AIM2欠損マウスを用いて急性腎障害でのAIM2インフラマソームの役割を解析し、AIM2インフラマソームが組織の修復や線維化、リモデリングの過程に重要な役割を果たしていることを報告した。本研究では、動脈硬化を含む心血管病でのAIM2インフラマソームの役割およびNLRP3インフラマソームとの役割の相違を解明することを目的に研究を行っている。動脈硬化での検討のため、動脈硬化モデルであるApoE欠損マウスとAIM2欠損マウスを交配させてAIM2/ApoEダブル欠損マウスを作成した。また、AIM2欠損マウスにCandida albicans培養上清(CAWS)投与によるマウス川崎病様血管炎モデルを作成して解析を行った。CAWSを投与したマウスでは、血中の2本鎖DNA量が増加しており、AIM2欠損マウスでは血管炎の発生率や線維化、マクロファージの浸潤が有意に抑制された。また、報告されているRNA-seqのデータベースを用いて解析を行い、ApoE欠損マウスの進行した動脈硬化病変においてAIM2発現がより増加していること、ヒト動脈硬化病変においても進行して不安定な動脈硬化プラークにおいてAIM2発現が増加していることが示された。これらのことから、動脈硬化を含む心血管病においてAIM2インフラマソームが重要な役割を果たしていることが明らかになり、AIM2が新たな治療標的となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ApoE/AIM2ダブル欠損マウスの繁殖にやや時間がかかっているが、CAWS血管炎モデルでの表現型や分子機序の解析は順調に進んでおり、新たな知見も得られていることから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
動脈硬化の病変ステージにおけるAIM2の役割やNLRP3の役割との相違を解析するため、高コレステロール負荷したApoE欠損マウスの早期および進行病変について解析を行う。また、NLRP3/AIM2二重欠損マウスと薬剤誘導型AIM2欠損(AIM2f/f;R26CreER)マウスを作成して、さらなる解析を行う。さらに、マクロファージや心血管細胞を用いた細胞実験により、分子機序の解明を行う。一方、他の心血管病モデルをAIM2欠損マウスに作成することで、様々な心血管病でのAIM2インフラマソームの役割の解明を目指して研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動脈硬化モデルであるApoE欠損マウスとAIM2欠損マウスとの交配により、ApoE/AIM2ダブル欠損マウスを作成しているが、実験に使用できる十分なマウス数を得ることができず、十分な解析のために時間が必要であることから、次年度使用が生じている状況である。
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