研究課題/領域番号 |
22K20887
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 紫乃 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (80962612)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / サルコペニア / 高齢 / オートファジー |
研究実績の概要 |
本研究では、加齢や肥満が筋衛星細胞のIL-15やその受容体のシグナル異常を惹起し、オートファジー機能低下を介した骨格筋分化障害を生じさせることが、サルコペニアの発症機序の一つであるという仮説1を立てている。さらに、加齢や肥満においてIL-15とその受容体の発現や局在、シグナルが変化することでIL-15とIL-15/ IL-15RA複合体の分泌低下を招き、その結果、サルコペニア患者で血中IL-15とIL-15/ IL-15RA複合体が低下する(サルコペニアバイオマーカーとなり得る)という仮説2を立て研究を進めている。 本研究の実績としてIL-15は骨格筋においてオートファジーをAMPK依存的に調整するという結果が示唆されている。AMPKはRaptorのリン酸化あるいはTSC2のリン酸化を介してmTOR複合体1を不活性し、mTOR複合体1非依存的にULK1とBeclin-1を直接リン酸化して活性化することでオートファジーの開始を誘導することが報告されているが、本研究においては骨格筋でIL-15がAMPK依存的にULK1を活性化させることが示唆されている。IL-15骨格筋特異的過剰発現マウス(IL-15-TGマウス)の解析から、IL-15はオートファジーの活性化に伴い骨格筋における筋量や筋力にも影響を及ぼしている可能性がある。特に骨格筋の種類(速筋、遅筋)によってもその動態が異なる可能性が考えられている。さらにIL-15には3つの受容体、IL-15RA、IL-2/15RB, IL-2RGが存在するが各受容体の発現量もIL-15による修飾を受けている可能性が示唆される結果が
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-15-TGマウスの加齢モデルとして72週齢まで飼育を行い、比較検討することを予定していたが、72週齢前に至らず死亡するマウスが多い。その為、コストと時間の問題を考え、高齢マウスを購入し、アデノウイルスによる外的にIL-15遺伝子導入を行うように計画を変更したため、予定より研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
既報においては複数の薬剤が様々な組織や組織由来の細胞にそれぞれ異なる機序で細胞老化をもたらすことが報告されている。これらの薬剤をマウス骨格筋細胞株であるC2C12細胞を用いて、薬剤誘導性の加齢性モデルを構築することを予定している。さらにAMPKの活性化阻害薬であるCompound CでIL-15のオートファジー活性化機構がキャンセルされるか否かを、C2C12細胞を使用して検討することを予定している。C2C12細胞で動態が確認できた場合、IL-15-TGマウスでの再現性の確認を行う予定である。また、IL-15のノックダウンshRNAやIL-15の過剰発現を行えるアデノ随伴ウイルスを構築し、購入した高齢マウスの骨格筋に注射することを計画している。 動物実験にも使用できるオートファジーやミトコンドリアやリソソームの機能を反映するバイオセンサーの構築を進める。またIL-15の3つの受容体、IL-15RA、IL-2/15RB, IL-2RGとIL-15の関連を評価する。
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