加齢性筋肉減少症(サルコペニア)は、高齢者の予後を大きく左右するため、その発症予測、重症度、治療のためのマーカーや効果的な特異的治療法の開発が望まれている。インターロイキン15(IL-15)は運動時に骨格筋から分泌される生理活性物質であるマイオカインの一つであり、運動の生理的効果の発現に寄与している可能性がある。本研究ではサルコペニアの進展機序におけるIL-15による骨格筋細胞の分化やオートファジーの調整機構の関与の証明を目的とした。IL-15TGマウスおよびIL-15KOマウスを用いた検討を行ったところ、IL-15TGマウスでは骨格筋リン酸化AMPKが増加し、オートファジーが亢進して骨格筋代謝にかかわる因子や筋力の改善効果が認められた。一方、IL-15KOマウスは運動時に下肢骨格筋量が減少し、AMPKによる運動効果も確認できなかった。このことから骨格筋の運動効果にはIL-15発現が必要であると示唆された。また、マウス骨格筋のエンリッチメントパスウェイ解析にてIL-15遺伝子欠損病態はオートファゴソーム経路と関連していることが明らかになった。IL-15KOマウスではオートファジー誘導の低下を認めており、IL-15遺伝子欠損はオートファジー誘導の低下を誘導することが示された。他方、IL-15TGマウスでは腓腹筋量が減少したものの、前肢握力や骨格筋のSDH活性が上昇した。IL-15の過剰発現により筋肉量は減少してもオートファジー誘導の活性化によって筋肉の質が改善し得ると考えられた。これらの結果から骨格筋におけるオートファジーに対するIL-15を制御することでオートファジー誘発性筋萎縮症の治療介入につながる可能性があると示唆された。
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